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農林水産省

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第2節 デジタル田園都市国家構想に基づく取組等の推進



「デジタル田園都市国家構想」は、デジタル技術の活用によって、地域の個性を活かしながら、地方の社会課題の解決や魅力の向上を図り、地方活性化を加速するものであり、高齢化や過疎化に直面する農山漁村こそ、地域資源を活用した様々な取組においてデジタル技術を活用し、地域活性化を図ることが期待されています。

本節では、デジタル田園都市国家構想に基づく取組のほか、持続的低密度社会の実現に向けた新たな施策の展開等について紹介します。

(農村からデジタル実装を進める取組が進展)

農村は、都市に比べて高齢化や人口減少が著しく、生活サービスの統廃合・撤退や交通手段の確保ができないこと等のほか、デジタル人材の不足等、様々な課題を抱えています。

一方、距離の壁を越えて、多様で創造的な付加価値の提供を可能とする、デジタル技術本来のポテンシャルを発揮していく好機は、地方に存在しています。各地域でデジタル実装を加速し、地方から全国に、ボトムアップの成長を目指す「デジタル田園都市国家構想」においては、高齢化や過疎化に直面する農山漁村こそ、地域資源を活用した様々な取組においてデジタル技術を活用し、地域活性化を図ることが期待されています。

こうした中、農山漁村においては、ICTを活用して買い物困難者の注文予約を効率化する取組や、リモートワーク環境の整備により農泊(*1)需要を開拓する取組、農林水産業の生産性向上を図る取組等、デジタル技術を活用して地域課題の解決を図る取組が広がりを見せています。

さらに、近年、地方からデジタル実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めようとする動きも見られます。都市と農村がデジタルでつながり、新たな都市農村交流とも言うべき新しい共存関係を築いていくことも重要となっています。

*1 用語の解説(1)を参照

(コラム)地方発の仮想空間を活用する動きが拡大

地域活性化等のため、インターネット上の仮想空間を活用する地方公共団体等が増加しています。デジタル技術の進展や新型コロナウイルス感染症の感染拡大等を背景に、実際に現地まで足を運ばなくても、仮想空間上で交流し、地方の魅力を伝える取組が見られています。

仮想空間(Virbela GAIA TOWN)内における農産物販売活動の取組イメージ

仮想空間(Virbela GAIA TOWN)内に
おける農産物販売活動の取組イメージ

資料:株式会社ガイアリンク

また、ビジネス面でも、仮想空間を活用する動きが広がっています。遠く離れた実需者や消費者に対し、音声や映像等を組み合わせて対面に近いバーチャル環境で商品のPRや商談を進める事例や、仮想空間上で果実の収穫風景をリアルタイムで配信して消費者との交流に活用する事例等が見られています。

都市と農村間の距離を埋める仮想空間上の取組は、農業・農村分野においても、都市農村交流や消費者と生産者との交流の促進に資するほか、農産物の販路拡大や農村での事業環境の改善等にも寄与することが期待されています。

(事例)デジタル技術を活用し、効率的な青果流通の仕組みを構築(静岡県)

静岡県牧之原市
デジタル技術を活用した青果流通システムで運行される「やさいバス」

デジタル技術を活用した青果流通
システムで運行される「やさいバス」

資料:やさいバス株式会社

静岡県牧之原市(まきのはらし)のやさいバス株式会社は、デジタルツールを活用した新しい青果流通の仕組みである「やさいバス」を運行し、消費者へ新鮮な青果を届ける取組を展開しています。

「やさいバス」は、デジタル技術を活用し、地域内で生産された新鮮な野菜を効率的に流通させる仕組みです。直売所や道の駅等に設けられた専用のバス停に、冷蔵トラックである「やさいバス」を巡回させ、時刻表に基づき集荷・配送を行っています。

Webサイトで消費者から直接注文を受けた生産者は、注文内容に応じて、農協施設や道の駅等の最寄りのバス停に野菜を出荷します。消費者は、指定のバス停で収穫後間もない野菜や旬の果実等を受け取ることができる仕組みとなっています。

同社は、消費者へ新鮮な青果を届けるとともに、生産者の高い利益率の実現を目指しており、末端部の輸送を行わないことで、配送コストの低減につなげています。

今後とも、生産者・消費者の双方向の情報連携と信頼関係の構築を重視しながら、農家・地域・顧客の全てに役立つ情報発信基地として、積極的な活動を展開していくこととしています。

(事例)IoTと地熱を活用したバジルの水耕栽培を展開(岩手県)

岩手県八幡平市
IoT技術を利用した独自の栽培管理システム

IoT技術を利用した
独自の栽培管理システム

資料:株式会社八幡平スマートファーム

岩手県八幡平市(はちまんたいし)の株式会社八幡平(はちまんたい)スマートファームは、地熱温水をIoT技術で制御し、暖房として利用するバジルの水耕栽培に取り組んでいます。

同社は、同市とIoT農業の振興を目的とした包括連携協定を締結した株式会社MOVIMAS(モビマス)により、農地法に定める農地所有適格法人として設立され、高齢化による離農や施設の老朽化等によって使用されなくなったビニールハウスを再生し、IoT次世代型施設園芸への転換を進めています。

再生したハウスでは、同市内の地熱発電所から供給される熱水が暖房に利用され、冬場の気温がマイナス15℃以下になる同市の気候条件下においても通年出荷が可能となっています。また、温湿度管理や養液の供給量等を、IoT制御システムを使って調整することにより、バジル栽培の省力化やコスト低減が図られています。

今後は、12棟のハウスを50棟まで拡大し、IoT技術と地域資源を活用した循環型社会モデルの創造に向けて地元の雇用創出につなげる計画を進めるとともに、バジルを使用した6次産業化(*)商品を地元企業と共同開発するほか、鶏ふんの燃料利用による温水暖房システムの推進等、地域特性を活かした新たな農業のビジネスモデルを確立し、地域活性化を図ることとしています。

* 用語の解説(1)を参照

農林水産省では、魅力ある豊かな「デジタル田園」の創出に向けて、中山間地域等におけるデジタル技術の導入・定着を推進する取組を支援するとともに、スマート農業(*1)やインフラ管理等に必要な情報通信環境の整備等を支援することとしています。

また、内閣府は、デジタル技術を活用した地域の課題解決や魅力向上に向けて、「デジタル田園都市国家構想交付金」による支援を行っています。

*1 用語の解説(1)を参照

(持続的低密度社会の実現に向け「新しい農村政策」を構築)

人口減少社会に対応した農村振興に関する施策や土地利用の方策等を検討するため、農林水産省は、令和2(2020)年5月から「新しい農村政策の在り方に関する検討会」及び「長期的な土地利用の在り方に関する検討会」を開催し、令和4(2022)年4月に「地方への人の流れを加速化させ持続的低密度社会を実現するための新しい農村政策の構築」(以下「新しい農村政策」という。)として、具体的な施策の方向性を取りまとめました。

新しい農村政策では、「しごとづくりの施策(*1)(農村における所得と雇用機会の確保)」、「くらしの施策(*2)(中山間地域等をはじめとする農村に人が住み続けるための条件整備)」、「土地利用の施策(人口減少社会における長期的な土地利用の在り方)」、「活力づくりの施策(*3)(農村を支える新たな動きや活力の創出)」を柱として、デジタル技術を活用しつつ、各施策が連携して好循環を生み出し、心豊かに暮らすことのできる「持続的低密度社会」の実現を目指しています。

「新しい農村政策の在り方に関する検討会」とりまとめ

「新しい農村政策の在り方に関する検討会」
とりまとめ
URL:https://www.maff.go.jp/j/study/nouson_kentokai/
farm-village_meetting.html

「長期的な土地利用の在り方に関する検討会」とりまとめ

「長期的な土地利用の在り方に関する検討会」
とりまとめ
URL:https://www.maff.go.jp/j/study/tochi_kento/

*1 しごとづくりの施策については、農山漁村発イノベーション(第3章第4節)のほか、中山間地域の農業の振興(第3章第3節)等を参照

*2 くらしの施策については、農村に人が住み続けるための条件整備(第3章第5節)等を参照

*3 活力づくりの施策については、農村を支える新たな動きや活力の創出(第3章第7節)等を参照

(地域ぐるみの話合いを通じた持続可能な土地利用を推進)

「長期的な土地利用の在り方に関する検討会」での検討を踏まえ、農林水産省では、地域の話合いを通じた持続可能な土地利用計画の策定や農地の粗放的利用、計画的な植林等の取組を支援することとしています。

具体的には、令和3(2021)年度に最適土地利用対策を新設し、市町村や地域協議会等が地域ぐるみの話合いを通じ、生産基盤や周辺環境を整備するなど、地域の特性を活かした農業の展開や地域資源の付加価値を向上させるための取組、農地等を低コストで維持するため、粗放的な利用(放牧や蜜源作物等)によるモデル的な取組を支援しています。

また、令和4(2022)年10月に施行された改正農山漁村活性化法(*1)により、地域の話合いを通じ、農林漁業団体等が放牧等の粗放的利用や鳥獣緩衝帯の整備、林地化等を行う場合に、地方公共団体に活性化計画の作成を提案できる仕組みや、事業実施に必要な手続の迅速化を図る仕組みのほか、市町村による土地の詳細な用途(有機農業、放牧等)の指定を推進する仕組み等を構築しました(図表3-2-1)。

図表3-2-1 持続可能な土地利用検討のプロセス

*1 正式名称は「農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律の一部を改正する法律」

(「国土形成計画(全国計画)」の骨子案を公表)

国土交通省は、新たな「国土形成計画(全国計画)(*1)」の策定に向け、令和5(2023)年3月に同計画の骨子案を公表しました。骨子案では、未曽有の人口減少、少子高齢化の加速化等、時代の重大な岐路に立つ中、「新時代に地域力をつなぐ国土」の形成を目指して、国土の刷新に向けて、「デジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成」、「持続可能な産業への構造転換」等、四つの重点テーマを掲げ、更にこれらを効果的に実行するため、「国土基盤の高質化」と「地域を支える人材の確保・育成」を分野横断的なテーマとして掲げています。

農林水産分野においては、地域生活圏の形成に資する取組として、地域資源とデジタル技術を活用した中山間地域の活性化や、持続可能な産業への構造転換に向けて、食料安全保障(*2)の強化に向けた農林水産業の活性化等を推進することとしています。

今後は国土審議会計画部会において更に検討を進め、同年の夏頃に新たな国土形成計画(全国計画)を策定する予定です。

*1 国土形成計画法に基づき策定する国土の利用、整備、保全を推進するための総合的かつ基本的な計画。平成27(2015)年に閣議決定した全国計画は同年からおおむね10年間の国土づくりの方向性を定めている。

*2 用語の解説(1)を参照



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