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愛知県

尾張・三河、二つの歴史が交差する愛知県

南は太平洋に臨み、北は長野県、岐阜県から続く山並みが広がる愛知県。また、一級河川の木曽川、豊川、矢作川などが注ぐ伊勢湾と三河湾に面しており、湾を囲んで肥沃な沖積平野が形成されている。北部から北東部にかけては、木曽山脈が南に伸びて三河高原を形成し、地域内には標高1,000mを超える山々も見られる。

気候は年間を通して温和。雨の多い夏季に対し、冬季は降雨が少ない。気温差は地域によって顕著にあらわれる。渥美半島と知多半島南部は、黒潮の影響を受けて温暖だが、北東部の山間ではやや冷涼。濃尾平野の北西部には、養老山地、鈴鹿山脈などがあり、冬季は大陸方面からの季節風で降雪する。

取材協力場所:自由が丘クッキングスタジオ

尾張地域の織田信長と三河地域の徳川家康

愛知県の成立は、1871年にまでさかのぼる。廃藩置県によって全国各地に府県が置かれ、尾張地域に名古屋県、三河地域に額田(ぬかた)県が生まれた。その翌年、名古屋県は愛知県に改められ、のちに額田県も愛知県に統合される。

戦国時代、尾張統一を成し遂げたのが織田信長である。2歳で那古野城(現在の名古屋城)の城主を務め、家督を継いでからは天下統一の野望を胸に着実に領地を広げていった。信長が出生したとされる愛西市・稲沢市の勝幡城(しょばたじょう)や本拠地にしていた清須市の清洲城など、県内にはゆかりの地が点在。国宝に指定されている犬山市の犬山城は、信長の叔父・信康によって築城された。

一方の三河地域は、土豪の牧野氏が勢力を広げていたが、1542年に今川義元の支配下に置かれる。やがて、三河生まれの徳川家康が台頭。家康による領国支配に対抗する三河一向一揆を鎮圧し、三河を手中に収めた。先んじて天下統一を果たした豊臣秀吉の死後、1600年の関ヶ原の戦いで石田三成を破り、征夷大将軍に。幕藩体制を敷き、覇権をにぎった。

家康の天下統一に貢献したのが、三河出身の三河武士団。勇猛果敢で実直な軍団で、発祥地の岡崎市には三河武士の歴史を辿る博物館も開設されている。

このように歴史において、別々の道を歩んできた尾張と三河だが、長い年月をかけて「愛知」という郷土意識は育まれていったのである。食文化においてはどのような広がりを見せたのか。尾張地域西三河地域東三河地域に分けて紹介しよう。

<尾張地域>
名古屋の食を支える豆味噌とたまり醤油

県庁所在地・名古屋市を中心に、信長が清州城を構えた清須市や「瀬戸物」で知られる瀬戸市、古くから醸造業で栄えてきた知多半島の半田市などで構成されている。

現在の名古屋市の街並みは、家康によって築かれた名古屋城の城下町と宿場町である熱田が基盤になっている。現在、城の南側は名古屋市役所や愛知県庁が置かれる官庁街に。さらに南に下ると、碁盤の目のように正方形に区切られた区域に入る。ここは、多くの商家や職人が暮らしていた町人街で、現在も区画の基礎を残しつつ問屋街や繁華街が形成されている。

愛知県で親しまれている調味料に「豆味噌」がある。大豆と食塩、水だけを原料に伝統技法で長期熟成されたこの味噌は、熟成に1年、長いものでは2、3年をかけるといわれている。高温多湿になる東海地方の夏は、味噌が酸っぱくなりやすいため、大豆に麹菌を直接付けることで安全に生育させる技法が発達したという。
名古屋城
豆味噌は、濃厚な旨味と渋み、酸味が特徴とされ、「味噌煮込みうどん」や「味噌田楽」といった郷土料理に使われる。

愛知県の郷土料理の保護・継承に取り組む「あいち郷土料理検討委員会」の安田文吉さんが、豆味噌に並ぶ調味料に挙げるのが「たまり醤油」である。
味噌煮込みうどん

画像提供元:「あいちの郷土料理レシピ50選」
(愛知県農業水産局農政部食育消費流通課作成)

安田さんいわく、「たまり醤油は醤油の一種。大豆と小麦でつくられる濃口醤油に対して、たまり醤油は材料のほとんどが大豆です。半田市でつくられるたまり醤油が有名で、名古屋市をはじめ県内全域で親しまれています。郷土料理の『かしわのひきずり』は、鶏肉を使ったすき焼き。この鍋の割り下に使われるのが、『たまり醤油』です。濃厚な風味と旨味が食欲をかきたて、一口食べたら箸がとまらなくなりますよ。豆味噌同様に、次世代へ継承すべき食文化といえるでしょう」。

「たまり醤油」は、刺身やすし、照り焼きなど幅広い料理に使われており、地元住民にとっては欠かせない味覚の一つになっている。
かしわのひきずり

画像提供元:「あいちの郷土料理レシピ50選」
(愛知県農業水産局農政部食育消費流通課作成)

<西三河地域>
徳川家康、三河武士ゆかりの郷土料理

愛知県のほぼ中央に位置する西三河地域。"三河武士発祥の地"として知られる岡崎市や紅葉狩りで有名な「香嵐渓(こうらんけい)」がある豊田市などで構成されている。
香嵐渓
この地方で、端午の節句に食べられているのが「いがまんじゅう」である。つぶあんを包んでだんご状にした餅に、薄紅、黄色、緑の三色に染めたもち米を散らした郷土菓子。名前の由来には、岡崎市伊賀町にちなんだという説、そのほか、散りばめられたもち米が栗の"いが"に見えるからという説など、諸説ある。
いがまんじゅう

画像提供元:「あいちの郷土料理レシピ50選」
(愛知県農業水産局農政部食育消費流通課作成)

寒い時期に食べられる「煮味噌」は、旬の野菜を自家製味噌で煮こんだ料理。根菜類を中心に煮こんだこの鍋は、現在も幅広い世代に親しまれる冬の味覚である。三河武士は、岡崎市の八帖町地区の特産「八丁味噌」を焼き味噌にし、携行食として常備していたという。そのまま食べることもあれば、味噌汁や「煮味噌」にすることもあった。寒さが厳しい季節、「煮味噌」をかこむ心温まるひとときは今も昔も変わらない。
煮味噌

画像提供元:「あいちの郷土料理レシピ50選」
(愛知県農業水産局農政部食育消費流通課作成)

<東三河地域>
将軍家にも献上されていた三河湾のアサリ

大化以前「穂(ほ)の国」と呼ばれた東三河地域。東三河地域は、豊川流域に位置し、遠州灘や三河湾、弓張山地に囲まれた地域で、豊橋市や蒲郡市などで構成されている。

東三河最大の都市・豊橋市は、酒井忠次や池田輝政が城主を務めた吉田城の城下町にあたり、東海道五十三次の宿場町として大いに栄えた。現在は、自動車輸出入港である三河港を擁し、大葉、キャベツ、トマト、豚などの生産も盛んにおこなわれている。
竹島
三河地域に海の幸をとどけるのが三河湾である。三河湾は豊川や矢作川から流れ込む栄養分により、水産物の宝庫となっている。

アサリやトリガイ、バカガイ(アオヤギ)などの貝類や、エビ類、ワタリガニなどは全国有数の産地で、タイやヒラメ、カレイなどの魚も多く、春から秋にかけては豊富な餌を求めてマイワシなども来遊する。さらに、冬から春にかけては青ノリの養殖が行われるなど、四季折々のたくさんの魚介類が水揚げされることが特色だ。

特にアサリは日本一の水揚げ量を誇り、干潟ではアサリ漁が盛んに営まれている。また、春にはアサリだけでなく、最近ではハマグリやバカガイも目当てに多くの観光客が潮干狩りを楽しんでおり、地域の重要な観光資源となっている。

豊橋市では、この大粒のアサリを串に刺して天日干しにした「串あさり」が珍味として親しまれており、江戸時代には将軍家に献上されていたという。
串あさり

画像提供元:「あいちの郷土料理レシピ50選」
(愛知県農業水産局農政部食育消費流通課作成)

そのほか、東三河地域に伝わる郷土料理に「アラメと落花生の煮つけ」がある。アラメとはコンブ科の海藻のこと。東三河地域の沿岸部にはアラメ場が分布しており、これに地元でとれた落花生を合わせる。ここでしか味わえない郷土の味覚が凝縮された一皿である。
アラメと落花生の煮つけ

画像提供元:「あいちの郷土料理レシピ50選」
(愛知県農業水産局農政部食育消費流通課作成)

「きしめん」や「味噌煮込みうどん」、「手羽先」など"なごやめし"の数々は、愛知県の食文化をあらわす一側面に過ぎない。尾張・三河地域にまで視野を広げ、その歴史的背景にも目を向けることが愛知県の食を楽しむ醍醐味といえそうだ。
愛知県

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