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関東地方 神奈川県

神奈川県

画像提供元:横浜観光情報

変化に富んだ自然環境と温暖な気候に恵まれた、首都圏の物資供給地

日本列島のほぼ中央に位置する神奈川県。県の中央には一級河川の相模川が南北に流れ、北西には箱根や丹沢の山地、南東には東京湾や相模湾に面した沿岸部や平地が広がる。
首都・東京に隣接し、約900万人の人口を抱える消費県でありながら、温暖な気候と山、海、川など起伏に富む自然に恵まれた農畜水産物の生産県でもある。
交通の要所が多く存在すること、観光地としても人気のあるエリアであること、また独特な歴史的背景もあって、和洋中問わずバラエティー豊かな郷土料理が生み出されてきた。

取材協力:つま正

日本の食の近代化に大きく貢献した国際貿易の要、横浜港

神奈川県の食文化を語るうえで、欠かすことができないのが横浜港の存在である。幕末、ペリー艦隊の来航により長い鎖国が終わると、1859年には国際貿易港として横浜港が開かれた。以来、横浜は外国文化の玄関口として、世界の食文化を日本でいち早く受け入れてきた。

港の周辺に外国人居留地がもうけられ、その一角は横浜中華街へと発展。また、牛鍋やシーフードドリアなど西洋文化をとり入れた横浜発祥の料理も数多く生まれた。
横浜中華街

大きく分けると、神奈川県は5つのエリアで構成されている。異国の食文化を寛容に受容してきた横浜・川崎地域、三方を海に囲まれた横須賀・三浦地域、古都の名残がある湘南・鎌倉地域、自然と都市が共存する県央地域、湖や温泉など多様な自然に恵まれた県西地域。それぞれのエリアの特徴と、そこで育まれた郷土料理を紹介しよう。

<横浜・川崎地域>
江戸時代に禁忌とされていた牛肉食を広めた「牛鍋」

江戸時代初期から始まり200年以上続いた日本の鎖国は、1858年に日米修好通商条約が締結されたことにより終焉を迎えた。その象徴ともいえるのが国際貿易港の開港である。なかでも横浜港は東京に最も近い港であり、日本における外国文化摂取の最前線として大いににぎわった。もともとは人家もまばらな寒村だった横浜に波止場が整備され、外国人の居住が許された外国人居留地のほか、日本人が店を構える日本人町や官庁街が設けられた。国際交流のなかで、諸外国の料理が日本人の口に合うようアレンジされ、日本中に広まっていくことも多かった。
外国人居留地

画像提供元:横浜観光情報

とりわけ日本の食文化の大きな転機となったのが肉食文化の流入である。古くは飛鳥時代に、仏教で殺生が禁じられていることを理由として、日本で初めての肉食禁止令が出された。時代によって変遷はあるものの、江戸時代の日本では公には肉食が禁じられており、獣肉を口にすることがなかったが、明治の近代化政策により肉食が解禁。西洋人が好んで食べていた牛肉を日本人の口に合うよう調味した横浜生まれの「牛鍋」が大流行し、まさに文明開化を代表する味となった。
外国人居留地だった地に、やがて大規模な中華街が形成されたこともあり、中華料理にルーツをもつ「サンマーメン」「シューマイ」も県民のソウルフードとして親しまれるようになった。
牛鍋

画像提供元:じゃのめや

さて、横浜市と東京都の間に位置するのが川崎市である。江戸時代には東海道の宿場町として大いににぎわい、また多摩川の豊かな水利を生かして大規模な水田開拓が行われた。現在は京浜工業地帯の一角をなしていることもあって工業地帯のイメージが強いが、実は内陸部には豊かな自然が残り、東京という大消費地が近いというメリットを生かした都市型農業がさかん。多種多様な作物を栽培しているのが特徴で、江戸時代から栽培されているという「のらぼう菜」もそのひとつである。アブラナ科の野菜特有の苦みやえぐみが少なく、ほのかな甘みとやわらかな食感が特徴で、おひたしにして食べるとその香りと甘み、歯ごたえが楽しめる。
のらぼう菜

画像提供元:かわさきのらぼうプロジェクト

<横須賀・三浦地域>
相模湾と東京湾に囲まれた半島は、温暖な気候で農産物も海産物も豊富

風光明媚な海の景色を楽しめる観光地として知られる三浦半島は、豊かな自然環境と入り組んだ海岸線をもつ。温暖な気候を生かした露地栽培や漁業が盛んなエリアである。
半島の先端にある三崎港の名物といえばマグロだろう。三崎は地形が港として適していたため早くから漁業が発達し、昭和初期には全国有数のマグロ類の水揚げ量を誇った。マグロは一般的にはトロ・赤身・中落ちなどが食されるが、三崎港近辺の飲食店では「マグロのかぶと焼き」をはじめ、さまざまな部位のマグロ料理を楽しめる。
マグロのかぶと焼き

画像提供元:三崎館本店

また、三浦半島は大根の大産地でもあり、その栽培は100年余りの歴史を有する。冬になると、海岸にたくあん用の大根がずらっと並んで干され、その景観は冬の風物詩となっている。地元ではさまざまな大根料理が楽しまれているが、切り干し大根より太さのある割り干し大根を用いた「割り干し大根のはりはり漬け」はポリポリとした歯ごたえが楽しめる一品。

やや趣を異にするのが横須賀地域である。幕末の開国以来、鎮守府や海軍施設が次々と設置され、軍港都市として発展を遂げてきた。戦後から現在に至るまで米海軍基地が置かれ、街には異国情緒があふれている。カレーによる街おこしが活発に行われており、海軍にゆかりのある「よこすか海軍カレー」が有名である。
よこすか海軍カレー

画像提供元:横須賀市

<湘南・鎌倉地域>
新鮮な海の恵みと、古都・鎌倉の伝統食を味わう

県の南に広がる相模湾には、丹沢山塊など周辺の山々や森から豊かな養分が流れ込む。その相模湾に面した湘南地域の名産は、なんといっても海の幸である。定置網漁や刺し網漁が中心で、日帰りで漁に出る小型船が多い。漁場、港、消費地の距離が近いため、獲れたての魚介を新鮮なうちに食卓に届けられるのだ。
漁に出る船

画像提供元:公益社団法人神奈川県観光協会

アジやサバなどもよく獲れるが、特産として知られるのがしらす。ただでさえ足の早いしらすを生で味わう「生しらす丼」は、水揚げ当日しか食べられないため、湘南地域ならではの名物料理として人気を得ている。
生しらす丼

画像提供元:快飛(かっとび)

また、三浦半島の付け根に位置する鎌倉地域は源頼朝が幕府を開いた場所。約250年の間、日本における政治や文化の中心地として栄えた古都である。そのため文化財、史跡、名勝、そして長い歴史をもつ神社仏閣も多数存在する。いまや国民食ともなっている「けんちん汁」は、鎌倉にある禅寺、建長寺で作られていた精進料理がルーツとされている。
けんちん汁

画像提供元:建長寺

<県央地域>
農村の暮らしのなかで育まれた郷土料理が今に伝わる

相模原市や厚木市からなる県央地域。丹沢・大山の山並みと宮ヶ瀬湖や相模川などの水源地を有する西部には田園風景が残るかたわら、南東部は幹線道路や鉄道が走る交通の要衝として発展してきた。伊勢原市にある大山は、古代から信仰の対象とされてきた霊山で、江戸時代には将軍をはじめとして年間20万人もの参拝者が訪れたという。良質な水に恵まれたこともあり、精進料理と相性の良い豆腐がいつしか名産となり、人々に「大山の豆腐料理」が知れ渡ることになった。
県央地域

画像提供元:公益社団法人神奈川県観光協会

一方、相模原市や座間市がある相模台地は火山灰が降り積もった土地であったため稲作に向かず、大麦、小麦、さつまいもなどが盛んにつくられたことから粉食文化が発達した。こうした農民の暮らしに寄り添うように生まれたのが、地粉やさつまいもを使った「酒まんじゅう」や「石垣団子」である。
石垣団子

また、神奈川県内では、開国をきっかけに居留地に住む外国人に向けて養豚が行われるようになったのだが、特にさつまいもの栽培に適していた県央地域では、いものツルやくずいもなどを飼料に活用できることから、明治・大正にかけて積極的に養豚が行われた。なかでも厚木市には、一時は約300軒もの養豚場があったという。都市化の波とともにその数は減少したが、今も豚肉を使った「とん漬け」が地域の名物料理となっている。

<県西地域>
山、湖、海、温泉。彩り豊かな自然環境によって成り立つ食文化

富士箱根伊豆国立公園や丹沢大山国定公園などの豊かな森林と山を背にした自然にあふれる地域。
静岡県との県境、箱根火山のカルデラ内にある芦ノ湖は、富士山を望む景勝地として知られるが、釣り場としても有名である。大正時代に茨城県からワカサギが移植されて以来、増殖事業が続けられ、今では芦ノ湖のワカサギは皇室への献上品にもなっている。ワカサギにはフライや南蛮漬けなどさまざまな調理法があるが、なかでも甘露煮はこの地域で古くから親しまれてきた料理で、正月には定番の品として食卓に上がる。
豊かな森林と山を背にした自然にあふれる地域

画像提供元:公益社団法人神奈川県観光協会

山のふもとに広がるエリアでは、みかんや湘南ゴールド、梅などの果実類が豊富に収穫されている。小田原では戦国時代以前から梅の栽培が行われていたそうで、江戸時代に書かれた「東海道中膝栗毛」に小田原の名産品として梅漬が登場する。小田原のオリジナル品種である十郎梅は、果肉が厚くて柔らかく、梅干用品種の最秀品とされている。
また、相模湾に面した小田原では新鮮な魚がよく獲れ、それを原料として古くからかまぼこが作られてきた。江戸時代には東海道の宿場町となり、食膳に出された「小田原のかまぼこ」が旅人の間で評判となった。
自然豊かで箱根などの温泉地があり、しかも東京から気軽に足を運べる距離にあるため観光地として発展してきたことが、県西地域の名産品が全国に知られる一因となったようだ。
豊かな森林と山を背にした自然にあふれる地域

画像提供元:小田原蒲鉾協同組合

神奈川県の主な郷土料理

  • けんちん汁

    けんちん汁

    大根やにんじんなどの野菜を油で炒めてから煮込む料理。その発祥には諸説あり、中国の...

  • 大山の豆腐料理

    大山の豆腐料理

    丹沢大山国定公園に属する標高1,252メートルの大山では、丹沢山系の良質な水を...

  • 生しらす丼

    生しらす丼

    新鮮な生しらすを酢飯(または白飯)に乗せた丼飯。茅ヶ崎、鎌倉、江の島など湘南地域...

お問合せ先

大臣官房 新事業・食品産業部外食・食文化課食文化室

代表:03-3502-8111(内線3085)
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