関東地方 神奈川県
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変化に富んだ自然環境と温暖な気候に恵まれた、首都圏の物資供給地
日本列島のほぼ中央に位置する神奈川県。県の中央には一級河川の相模川が南北に流れ、北西には箱根や丹沢の山地、南東には東京湾や相模湾に面した沿岸部や平地が広がる。
首都・東京に隣接し、約900万人の人口を抱える消費県でありながら、温暖な気候と山、海、川など起伏に富む自然に恵まれた農畜水産物の生産県でもある。
交通の要所が多く存在すること、観光地としても人気のあるエリアであること、また独特な歴史的背景もあって、和洋中問わずバラエティー豊かな郷土料理が生み出されてきた。
取材協力:つま正
日本の食の近代化に大きく貢献した国際貿易の要、横浜港
港の周辺に外国人居留地がもうけられ、その一角は横浜中華街へと発展。また、牛鍋やシーフードドリアなど西洋文化をとり入れた横浜発祥の料理も数多く生まれた。

大きく分けると、神奈川県は5つのエリアで構成されている。異国の食文化を寛容に受容してきた横浜・川崎地域、三方を海に囲まれた横須賀・三浦地域、古都の名残がある湘南・鎌倉地域、自然と都市が共存する県央地域、湖や温泉など多様な自然に恵まれた県西地域。それぞれのエリアの特徴と、そこで育まれた郷土料理を紹介しよう。
<横浜・川崎地域>
江戸時代に禁忌とされていた牛肉食を広めた「牛鍋」

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外国人居留地だった地に、やがて大規模な中華街が形成されたこともあり、中華料理にルーツをもつ「サンマーメン」「シューマイ」も県民のソウルフードとして親しまれるようになった。

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<横須賀・三浦地域>
相模湾と東京湾に囲まれた半島は、温暖な気候で農産物も海産物も豊富
半島の先端にある三崎港の名物といえばマグロだろう。三崎は地形が港として適していたため早くから漁業が発達し、昭和初期には全国有数のマグロ類の水揚げ量を誇った。マグロは一般的にはトロ・赤身・中落ちなどが食されるが、三崎港近辺の飲食店では「マグロのかぶと焼き」をはじめ、さまざまな部位のマグロ料理を楽しめる。

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また、三浦半島は大根の大産地でもあり、その栽培は100年余りの歴史を有する。冬になると、海岸にたくあん用の大根がずらっと並んで干され、その景観は冬の風物詩となっている。地元ではさまざまな大根料理が楽しまれているが、切り干し大根より太さのある割り干し大根を用いた「割り干し大根のはりはり漬け」はポリポリとした歯ごたえが楽しめる一品。

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<湘南・鎌倉地域>
新鮮な海の恵みと、古都・鎌倉の伝統食を味わう

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<県央地域>
農村の暮らしのなかで育まれた郷土料理が今に伝わる

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また、神奈川県内では、開国をきっかけに居留地に住む外国人に向けて養豚が行われるようになったのだが、特にさつまいもの栽培に適していた県央地域では、いものツルやくずいもなどを飼料に活用できることから、明治・大正にかけて積極的に養豚が行われた。なかでも厚木市には、一時は約300軒もの養豚場があったという。都市化の波とともにその数は減少したが、今も豚肉を使った「とん漬け」が地域の名物料理となっている。
<県西地域>
山、湖、海、温泉。彩り豊かな自然環境によって成り立つ食文化
静岡県との県境、箱根火山のカルデラ内にある芦ノ湖は、富士山を望む景勝地として知られるが、釣り場としても有名である。大正時代に茨城県からワカサギが移植されて以来、増殖事業が続けられ、今では芦ノ湖のワカサギは皇室への献上品にもなっている。ワカサギにはフライや南蛮漬けなどさまざまな調理法があるが、なかでも甘露煮はこの地域で古くから親しまれてきた料理で、正月には定番の品として食卓に上がる。

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また、相模湾に面した小田原では新鮮な魚がよく獲れ、それを原料として古くからかまぼこが作られてきた。江戸時代には東海道の宿場町となり、食膳に出された「小田原のかまぼこ」が旅人の間で評判となった。
自然豊かで箱根などの温泉地があり、しかも東京から気軽に足を運べる距離にあるため観光地として発展してきたことが、県西地域の名産品が全国に知られる一因となったようだ。

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神奈川県の主な郷土料理

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