このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

九州・沖縄地方 沖縄県

沖縄県

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

暖かく穏やかな気候に育まれた、個性あふれる魅力とのんびりとした時間

日本列島の南西端に位置し台湾の間の東シナ海に浮かぶ沖縄県は、最大面積を誇る沖縄本島を中心に宮古島や石垣島、西表島などの160の島から構成されている。そのうち、47の島々に人が住んでいる。

取材協力:一般社団法人トータルウエルネスプロジェクトオキナワ

沖縄県というと、他府県または他都道府県にはない暖かく穏やかな亜熱帯気候が特徴。真冬でも10度以下になることがほとんどなく、反対に最高気温が30℃を超える日が100日以上になることもあるが、温度差が少ないのが特徴。そんな温暖な気候の恩恵を受けた沖縄県は、広大なビーチや色とりどりの魚やサンゴ礁が見られる美しい海、一年中鮮やかに咲き誇る花々、ユニークな生き物など、美しく個性あふれる魅力が詰まっている土地だ。また、のんびりとした時間が流れる島々では、それぞれ異なる文化が発展しており、各島の祭りは多種多様。地元民の楽しみのひとつとしてだけでなく、観光客の誘致にもひと役買っている。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

そんな独自の歴史を持つ沖縄県は、2000年に、ユネスコの世界文化遺産に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」が登録され、王国の歴史や建築、人々の生活や信仰を今に伝えている。「グスク」とは城のことで、日本だけでなく、中国や朝鮮、東南アジア諸国との交易を通して国際色豊かな独自の文化を形成してきた沖縄県の特色をとりわけ反映している文化遺産だ。また、異なる国の文化を受け、食文化にも個性が生まれた。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

宮廷料理と庶民料理、二つの料理を元に受け継がれ続ける味と技術

沖縄で発展、継承されてきた伝統的な料理は「琉球料理」と呼ばれる。その基礎となるのが「宮廷料理」と「庶民料理」の二つだ。

沖縄県が独立国の琉球王国であった時代、宮廷行事や儀式、接待などのために作り出されたのが「宮廷料理」だ。15世紀以降の冊封使などに見られる中国との関係、17世紀以降の薩摩の在番奉行などによる日本との関係といった具合に、日中が大きく影響を及ぼしている。諸外国の要人達のウトゥイムチ(もてなし)のために誕生した料理や技術、作法などが洗練されていき「宮廷料理」として確立したとされており、それが明治以降に上流階級に広がったと言われている。そんな「宮廷料理」に欠かせない「東道盆(トゥンダーブン)」という、琉球漆器の代表的な器がある。四角や六角、八角、円形などの形がある前菜入れ、中の小皿にそれぞれ、色や形が美しく、冷めても味の変わらない料理を盛り込む。盛り付けられた料理も含めて東道盆と呼ばれ、料理は、甲いかに切り込みを入れ、美しくはじかせた「花いか」、豚ロース肉にゴマだれをまとわせて蒸した「ミヌダル」や、肉を混ぜた魚のすり身で作る「シシかまぼこ」などがある。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

「庶民料理」は、その名の通り、庶民が日々の暮らしの中で食してきたケの日の料理だ。中でも伝統的な郷土料理には、中国から伝わった医食同源の思想が根付いている。医食同源とは、病気を治す薬と食べ物は本来根源を同じとする、という意味で、沖縄県では「クスイムン(薬になるもの)」や「ヌチグスイ(命の薬)」と呼ばれる。例えばアオリイカのスミを用いた「イカスミ汁」はのぼせや頭痛、産後の回復に、ヤギ肉を煮込んだ「ヒージャー汁」は栄養価が高く疲労回復薬として親しまれてきた。また、亜熱帯、島嶼という自然環境のもとで手に入る、ゴーヤーをはじめ、ヘチマや田芋などの他都道府県ではあまり使われない滋養豊かな材料を用いたことで、独自の料理ができあがった。また、沖縄県の「庶民料理」の大きな特徴として、かつおと豚のだしの多用がある。かつおだしは、一般的なかつおだしと同様でかつお節を沸騰した湯に入れてとるもの。豚だしは豚の肉や豚だし骨からとるもので、かつおだしと合わせて料理に使われることも多い。汁物でよく使われており、「沖縄そば」のスープは、そのバランスが家庭や店ごとの味の決め手となる。また、「庶民料理」では、乾燥した昆布や干ししいたけもよく使用するが、こちらはだしとしてよりも具材としての意味合いの方が強い。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

琉球料理の軸となる「宮廷料理」と「庶民料理」とは、また違った伝わり方をしているのが「行事料理」だ。沖縄県には、豊作や大漁を祈願したもの、祖先崇拝の思想を元にしたものなどの沖縄独自の催しをはじめ、中国から伝わったものなど多彩な年中行事が行われている。これらの行事では、決まって地域の人々や親族などのたくさんの人が集まり、皆で酒を酌み交わし、料理を食べる機会がある。それにより、絆を再認識し、人や地域のつながりが強固になる。例えば、県内各地で盛大に行われる清明祭や旧盆、法事には、重詰め料理が用いられ、これには豚三枚肉、かまぼこ、昆布、揚げ豆腐など九品をモザイク状に詰める。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

これらの食文化が源流となり、現在の沖縄県の多様な食文化が形成されている。今回は沖縄県を本島離島に分けて紹介する。

<本島>
「以類補類」の思想に基づき根付く豚肉料理

沖縄県には、人が住んでいる島だけでも47の離島があるが、共通して食されているのが本島で根付く琉球料理だ。

よく食べられる食材としてあげられるのが豚で、「鳴き声以外はすべて食べ尽くす」「豚に始まり豚に終わる」などの言葉が伝わるほど、余すところなく食されている。例えば、特によく食されているのが皮付きの三枚肉で、これは砂糖や醤油、泡盛で煮込んだ「ラフテー」、味噌仕立てで具だくさんの「イナムドゥチ」などがある。また、内臓はお吸い物仕立ての「中身汁」、豚足は昆布や大根などとじっくりと煮込んだ「足ティビチ」、血液は根菜や乾物と炒め煮にした「血イリチー」として食されている。この皮から内臓まで大切に食べ尽くす習慣は、「以類補類」の考え方に基づいている。中国の薬膳の思想で、体の悪い部分と同じ豚の部位を食すことで治すという食事法だ。豚肉料理は日々の生活でも食べられるが、正月料理としての側面も強い。沖縄の正月は“豚肉正月”と呼ばれるほどで「イナムドゥチ」や「中身汁」「ソーキ汁」などの汁物が食される。かつては、貧しい庶民が正月を祝うために、大みそかのうちに家畜の豚をさばくのが常であった。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

沖縄県では、豚肉が最も食される肉だが、やぎ肉を食すこともあり刺身や汁物で食される。汁物は「ヒージャー汁」と呼ばれ、爪とツノ以外の肉や内臓などのすべてを大鍋でじっくりと煮込んだ料理だ。大人数で食べる風習があり、祝い事や激励会、棟上げのお祝いなどで食される。また、牛肉は冬が旬の島ニンジン「チーデクニ」と煮込んだ「牛汁」という郷土料理が伝わる。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

また、豆腐食の文化も独特だ。沖縄県で製造される豆腐は「島豆腐」と呼ばれており、大豆を水につけてふやかしてからすりつぶし、絞ってから煮てにがりを入れて固めた木綿豆腐。県内では温かい状態で販売されているのが特徴で、崩れにくいためチャンプルーのような炒める料理で重宝されている。また、にがりを入れて固まり始めた、型に入れる前の状態は「ゆし豆腐」と呼ばれる。沖縄県では、ケの日の庶民料理で多く使われる豆腐だが、「ジーマーミ豆腐」は、法事や祝い事などの行事料理。落花生の絞り汁に水で溶いたいもくずを加えて練り、固める逸品。落花生が貴重だった時代には、精進料理の一種として特別な日に食されていた。「島豆腐」も「ジーマーミ豆腐」も沖縄県の郷土料理としてポピュラーであり、最近では県外でも販売されている。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

<離島>
島ごとの祭事や文化を反映する離島の食習慣

本島で食されている琉球料理がベースとなり、離島ごとにもそれぞれの味覚が生まれている。

例えば、八重山諸島に独自に伝わるのが「イラギムン」だ。沖縄県全域で食されている、熟す前の青いパパイヤ「野菜パパイヤ」を使った料理で、豚肉を湯がいただしで、その豚肉とパパイヤを味噌で煮物にする家庭の味。八重山諸島の家の裏庭や屋敷の隅などに植えられていたパパイヤと、かつてはどの家庭でも手作りした味噌を用いて作っていたという。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

沖縄県の古い町並みが残る竹富島は、赤煉瓦の民家や屋根の上のシーサーなどの原風景を目当てに観光客が多く訪れる島のひとつ。島最大の祭事で、600年もの歴史を持つ「種子取祭」にも島内外から人々が訪れている。この祭りは、旧暦9月、10月の甲申の日から9日間行われるもので、祭事の参加者がすぐ食べられる保存食が用意されていた。特に多忙な、奉納芸能を行う前後の日は「イーヤチ」を食す。「イーヤチ」は、もち米にもち粟や小豆を混ぜ込んで炊いた伝統的な保存食。サツマイモが常食だった昔は、祭りの時に食べられる「イーヤチ」は島民にとってごちそうでもあった。現在も「種子取祭」に欠かせない料理で、必ず食べられている他、作り方を伝承するために、島内での勉強会やイベントなども行われている。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

また、本島とは味付けを変え、親しまれている料理がある。島ニンジンと牛肉をかつおだしで煮込み、塩と醤油ですまし汁のように仕上げる「牛汁」もそのひとつ。細微な白砂のビーチとエメラルドグリーンの海が美しい宮古島では、味噌で仕立てるのが特徴だ。宮古島では希少な宮古牛を使った「牛汁」を提供する店もある。

画像提供元:©沖縄観光コンベンションビューロー

沖縄県の主な郷土料理

  • 中身汁

    中身汁

    豚肉がよく食べられる沖縄県では、余すところなく料理に使うことから「鳴き声以外は...

  • クーブイリチー

    クーブイリチー

    沖縄県の郷土料理でよく耳にする“イリチー”とは炒め煮のことを指し、乾物や根菜類...

  • イナムドゥチ

    イナムドゥチ

    沖縄県では、「イナ」はイノシシ、「ムドゥチ」はもどきの意味を持ち、郷土料理の...

お問合せ先

大臣官房 新事業・食品産業部外食・食文化課食文化室

代表:03-3502-8111(内線3085)
ダイヤルイン:03-3502-5516
FAX:03-6744-7175