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農林水産省

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関西地方 大阪府

大阪府

全国の特産品が集まる「天下の台所」で花開いた豊かな食文化

中央には肥沃な平野が広がり、西には瀬戸内海(大阪湾)、そして北・東・南の県境は山地に囲まれた大阪府。1年を通しておだやかな気候で、海の幸、山の幸に恵まれている。
16世紀の終わり、天下統一を果たした豊臣秀吉が本拠地と定めたのが大阪(当時の表記は「大坂」)であった。秀吉は巨大な大坂城(大阪城)を築くとともに周辺地域の整備や開発を進め、堀川が縦横無尽に走る城下町をつくりあげた。主な輸送手段が船だった当時、海に面しているうえに水路が豊富な大阪は物流の集積地となり、商都として急速に発展した。

取材協力店舗:浪速割烹 㐂川
取材協力者:熊谷真菜(日本コナモン協会)

江戸時代になり政治の中心が江戸に移ってからも、陸海交通が発達した大阪は変わらず経済・商業の一大拠点であった。全国の年貢米や特産品が大阪の蔵屋敷に集められ、商人たちによって売りさばかれて、また全国各地へと送られた。各地の食材が頻繁に売買される大阪はいつしか「天下の台所」と呼ばれるようになり、選りすぐりの食材を使った多種多様な料理が楽しまれてきた。食材を大切にし、無駄を出さず、極力捨てることをしない「始末の精神」と、食への熱い情熱によって、「食い倒れのまち」といわれるほど豊かな食文化が育まれていった。

一方、山や海など自然あふれる周辺部では、それぞれの土地の食材を活用した郷土料理も受け継がれてきた。大阪湾はかつて「魚庭(なにわ)」と呼ばれるほど魚がよく獲れたため、沿岸地域には魚を利用した郷土料理が豊富である。また、平野や山村地域には、古くから栽培されてきた伝統野菜を用いた品も多い。ただし、近年は伝統野菜が姿を消しつつあるため、大阪府は100年以上前から府内で栽培されてきた品種を「なにわの伝統野菜」として認証するなど、その復活や普及に力を入れている。

昆布をベースとした「だし文化」が発達

大阪人はだしの味を大切にする。汁物はもちろん、たこ焼きやお好み焼きなどの「粉もの」にもだしが入る。関東ではかつおを使っただしがよく用いられるが、大阪は昆布をメインに、かつお節を組み合わせただしが好まれる。
お好み焼き

画像提供元:(公財)大阪観光局

地域によるだしの味の違いには、歴史的・地理的な背景が要因として考えられる。海上交通がさかんだった江戸時代、昆布の産地である北海道から日本海を通って大阪へとつながる西まわり航路が確立すると、大阪に大量の昆布が運び込まれるようになった。このルートは現在では「昆布ロード」と呼ばれることもある。加えて、大阪の水は軟水で、昆布からおいしいだしをひく条件が整っていたため、昆布だしが普及したともいわれる。そこに、和歌山、高知、鹿児島で揚がるカツオを加工したカツオ節が出合い、合わせだしが生まれた。
ちなみに関西でも、大阪では濃厚なだしが味わえる真昆布が主に使われるが、京都ではあっさりした利尻昆布が好まれるという違いがあるのも面白いところだ。

さて、だしの味をそのまま楽しめるのがうどんである。うどん料理の中でも大阪府民が最も愛するのが、甘辛く煮付けた油揚げをのせた「きつねうどん」。だし、うどん、具材の調和が楽しめる、シンプルながら完成された一品である。

ここでは大阪府を、大阪市内北摂地域河内・南河内地域泉州地域の4つのエリアに分けて、それぞれの食文化を紹介する。
きつねうどん

画像提供元:(公財)大阪観光局

<大阪市内>
西日本における経済・文化の中心都市。安くてうまい飲食店がしのぎを削る

大阪府のほぼ中央に位置する大阪市は、大阪府のみならず、西日本における経済・文化・交通の中心都市。海に面し、河川も多いため、港湾都市として発達した商業の街である。
大阪市内は、最新トレンドを生み出すキタエリア、大阪情緒を感じられるミナミエリア、歴史を堪能できる大阪城エリアなど、地域によって異なる表情を楽しめる。
新世界

画像提供元:(公財)大阪観光局

キタとミナミの中間にある船場は、豊臣秀吉が城下町の建設に際して堺の商人たちを集めた経済の中心地である。大阪の料理は「始末の料理」といわれるが、その始末の精神をよく反映しているのが、船場で古くから親しまれてきた「船場汁」。かつて、船場の商家には多数の奉公人が勤めていたが、その食生活はきわめて質素なものであった。塩鯖などの魚が食膳に上がるのは月2回。その魚の身をとった後の頭、骨、あらからだしをとり、大根を煮たものが船場汁である。食材を無駄にせず使い切るので経済的であるうえ、手間なく作れるために商家で重宝された。
船場汁

画像提供元:公益財団法人大阪府学校給食会

また、大阪といえばまず思い浮かぶ料理が、お好み焼きやたこ焼き。こうした「粉もの」料理は、大阪人の日常に欠かせないソウルフードであるとともに、観光客からも大阪の代名詞として人気を得ている。市内には観光地や繁華街をはじめ、至るところにお好み焼き・たこ焼きを提供する店舗があり、だし、生地、具材など、さまざまに独自の特色を打ち出している。
たこ焼き

画像提供元:(公財)大阪観光局

<北摂地域>
都心から少し離れれば、山、川、里山の景観が楽しめる

大阪府を横断するように流れる、2つの一級河川がある。一つは、琵琶湖に端を発する淀川。もう一つが、江戸時代に付け替えが行われた大和川である。
北摂地域は、淀川から北側のエリア。県境は山間地で、南部には住宅地が広がっている。太陽の塔で有名な万博記念公園や府立北摂自然公園など自然を満喫できるスポットが豊富で、都心から少し離れれば里山の風景も楽しめる。
上音羽の摩崖仏

画像提供元:(公財)大阪観光局

農業もさかんで、「銀寄(ぎんよせ)」と呼ばれる能勢栗のほか、なにわ伝統野菜の「吹田慈姑(すいたくわい)」、「服部越瓜(はっとりしらうり)」、「三島独活(みしまうど)」、「鳥飼茄子」、「高山ごぼう」、「高山真菜」が生産されている。
江戸時代後期以降、北摂地域の山村では、農閑期である冬に寒天が生産された。その寒天を使って作られたのが「丁稚(でっち)ようかん」である。砂糖をふんだんに使った通常のようかんと比べ、砂糖の使用量が少ない丁稚ようかんはあっさりとした味わいである。
丁稚ようかん

画像提供元:能勢町商工会

<河内・南河内地域>
古代から長い歴史が続く地域。農村文化を今に伝える郷土料理も

大阪府の東部に、大和川をまたいで南北に広がるのが河内・南河内地域。古代に大きな政治勢力があったことから、4~5世紀に築造された巨大古墳群や遺跡、文化的遺産など長い歴史をもつ見どころが点在する。渡来人とのかかわりが深く、また古くから大阪と京都や奈良などを結ぶ街道が通っていたため人の往来が多く、人間性豊かな土地柄である。江戸時代の大和川の付け替えにより、河内木綿の栽培がさかんとなり、繊維産業が発展した。
現在、山麓部ではなす、きゅうりといった野菜のほか、ぶどう、みかん、いちじくなど果樹の栽培もさかんに行われ、山間部には林業地域が広がっている。東大阪市や八尾市は、ものづくりの街として知られる。
下赤坂の棚田

画像提供元:(公財)大阪観光局

この地域の農村文化を今に伝える郷土料理が「あかねこ」である。「あかねこ」はもち米と小麦粉で作ったもち菓子で、田植えが終わった7月初旬に、豊作を祈願しながら食した。当時は小麦を皮ごと挽いていたため、もちも褐色になりその姿が丸まった猫に似ていたことからその名が付いたという。
現在でも、大消費地である大阪市に近いという土地の利を活かし、都市型農業が発達している。
あかねこ

画像提供元:公益財団法人大阪府学校給食会

<泉州地域>
泉州を代表するブランド野菜、泉州水なすは浅漬が定番

大阪府の南西部に位置する泉州地域は、西は大阪湾、南は和泉山地に接し、山海の自然に恵まれたエリアである。域内には関西国際空港があり、国内外からのアクセスも良好。世界最大級の墳墓である仁徳天皇陵古墳や、南北時代からの歴史をもつ岸和田城など、歴史を感じられるスポットも多数存在する。
泉州

画像提供元:(公財)大阪観光局

自然に恵まれ、1年を通して温暖な泉州地域にはさまざまな特産品があるが、全国的に名を知られているのが「泉州水なす」である。水なすはその名の通り、水分をたっぷりと含んだみずみずしさが特徴で、アクが少なく生のまま食べることができる。昔、この地域の農家たちは田畑の片隅に水なすを植え、のどの渇きを水なすで潤したという。定番はぬかなどにさっと漬けた「泉州水なすの浅漬」である。
泉州水なすの浅漬

画像提供元:山中 弓子

そして、この泉州水なすをぬか床でじっくりと古漬にし、小海老とともに煮込んだものが「じゃこごうこ」。じゃことは海老じゃこ(小海老)のことで、「ごうこ(こうこ)」は漬物を指す。近くの海でよく獲れる海老じゃこと、特産品である水なすを活用した泉州地域ならではの郷土料理といえる。
じゃこごうこ

画像提供元:山中 弓子

大阪府の主な郷土料理

  • 泉州水なすの浅漬

    泉州水なすの浅漬

    大阪南部に広がる泉州地域を代表するブランド野菜、泉州水なす。これをぬかや漬物調味液…

  • じゃこごうこ

    じゃこごうこ

    地域特産の泉州水なすをぬか床にじっくり漬け込んだ古漬けを塩抜きし、小海老と甘辛く炊…

  • ばらずし

    ばらずし

    穴子やしいたけなどの具を刻み、すし飯に混ぜ込んだ五目ずし。一説によると、ばらずしの…

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