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九州・沖縄地方 佐賀県

佐賀県

画像提供元:佐賀県観光連盟

海と平野で育まれた農林水産業と華やかで多彩な文化

九州地方の北西部に位置し、東は福岡県、西は長崎県に接する佐賀県。北には玄海国定公園に指定された風光明媚な海岸線を誇る玄界灘、南には最大干満差6mの広大な干潟が広がる有明海を有し、ふたつの海の恵みを享受して、水産業が発展を遂げてきた。特に有明海の海苔は有名で、板海苔の生産量は全国1位(令和元年農林水産省「漁業・養殖業生産統計」)。また、農業も盛んに行われており、有明海を臨む佐賀平野など田園風景も広がる。中でも、アスパラガスや玉ネギ、レンコンは、全国2位の生産量を誇る(令和元年農林水産省「作物統計」)。

取材協力:西九州大学佐賀調理製菓専門学校

佐賀県は、朝鮮半島まで約200kmと近接しており、大陸文化の窓口としても重要な役割を果たしてきた。中でも有名なのが、県北西部にある有田町や伊万里市、唐津市で作られる陶磁器。現在も歴史ある窯が残り、受け継がれてきた技術を後世に伝えている。また、九州北部に伝わる秋祭り“くんち”も行われており、特に唐津くんちは日本三大くんちに数えられる。豪快で美しい曳山を目当てに、県内外から訪れる人が後を絶たない。県西には、武雄温泉、嬉野温泉と県を代表する温泉街が。ともに歴史が長く、湯だけではなく、風情でも人々を癒やしている。

画像提供元:佐賀県観光連盟

玄界灘と有明海、海で異なる二つの食の歴史

二つの海の恩恵を受け栄えてきた、佐賀県の漁業。それぞれ特色が異なる海では、漁業や食の文化も異なる発展を遂げてきた。対馬海流が流れ、世界有数の漁場として知られる玄界灘は、江戸時代から戦後にかけて捕鯨業で栄えた地域。かつては、「鯨一頭で七浦がにぎわう」と言われていたほどだ。当時は貴重な栄養源だったこともあり、肉だけでなく内臓や脂肪層も無駄なく食用にしていた。また、食べるだけでなく、ヒゲは釣りざおやぜんまい、鯨油は灯用や石けんなどにして、人々の生活を支えていた。捕鯨が禁止された現在では、呼子のイカやマダイなどが有名だ。

画像提供元:(一社)唐津観光協会

有明海は、河川からの栄養分が多く流れ込み、海苔の養殖が盛ん。また、珍しい姿形をした魚介類が生息しており、それらは“前海もん(まえうみもん)”と呼ばれる。特に知られているのがムツゴロウで、ほかにもワラスボやシャッパ(シャコ)、ハゼクチなどが水揚げされる。「むつかけ」や「四つ手網」などの、干満差を利用した漁法も特徴的だ。

画像提供元:佐賀県観光連盟

佐賀平野有明海沿岸脊振山地玄海灘沿岸有田多良山麓各地域に目を向け、佐賀県のゆたかな食文化を紹介しよう。

<佐賀平野>
川魚料理が伝わる県内随一の米どころ

温暖な気候に恵まれた佐賀県は、日本最古の水田跡といわれる「菜畑遺跡」があることからもわかるように、古くから稲作が行われてきた。特に有明海の広大な干潟を干拓し形成された佐賀平野はミネラル豊富で肥沃な大地を持つ、全国屈指の米どころ。佐賀県独自の多彩な銘柄の米が生産されており、「さがびより」は「米の食味ランキング(日本穀物検定協会公表)」の最高ランク「特A」に10年連続(平成22年~令和元年産)で評価されるほどのおいしさだ。
そんな佐賀平野は、かつては慢性的な水不足に悩まされており、それによって発達したのが用水堀のクリーク。クリークは稲作を支えるだけでなく、さまざまな淡水魚の住処としても機能してきた。そのため、フナやコイなど川魚を食す文化もあり、色濃く残るのが鹿島市浜町で食される「ふなんこぐい」だ。昆布で巻いたフナをダイコンやゴボウとともに煮込んだ郷土料理で、高価なうえ、有明海ではあまり獲れなかったタイの代わりにフナを使ったのが始まりだとされる。

画像提供元:鹿島市観光協会

また、佐賀平野では麦も盛んに作っており、佐賀県の生産量は、小麦は全国3位、二条オオムギは全国1位(令和元年農林水産省「作物統計」)。さらに大豆は全国4位の収穫量(令和2年農林水産省「大豆の都道府県別収穫量」)を誇る。

<有明海沿岸>
日本一の干潟を持つ有明海で育まれた食文化

佐賀県、福岡県、長崎県、熊本県に囲まれた有明海は、干潮と満潮が日に2回ずつ起こり、その干満差は6~7mと日本一。干潮時の干潟の面積も日本最大を誇る。そんな有明海は、大小計112もの河川が流れ込んでおり、それにより適度な濃さの海水を持ち、栄養を豊富に含む。干満差によって海水と日光を交互にたっぷりと吸収できることからも、海苔の養殖に適した地だ。ここで生産された海苔は、板海苔として出荷されるほか、海苔の佃煮などに使用される。

また、肥沃な干潟には、有明海でしか見られない“前海もん(まえうみもん)”と呼ばれる魚介たちが生息する。代表的なのがムツゴロウで、他には「エイリアンのような見た目」と地域でいわれるワラスボ、シタビラメの一種であるクチゾコなど。それぞれ、地元では家庭の食卓や飲食店のメニューの素材として親しまれており、「むつごろうの蒲焼」や「わらすぼのみそ汁」、「くちぞこの煮つけ」といった郷土料理として食されている。

画像提供元:佐賀県観光連盟

<脊振山地>
厳しい山地だからこそおいしく仕上がる干し柿

玄界灘の海岸線が一望できる標高1055mの脊振山。その脊振山を最高峰に含み、基山、九千部山、石谷山、雷山などが東西に連なる脊振山地。平坦部が比較的多い穏やかな山として、登山やハイキングなどのスポットとして有名だ。この地域で300年以上も続く、秋の風物詩「柿のれん」。手作業でひとつひとつ皮をむいた柿を干した、干し柿作りの様子で、ずらりと柿が吊るされた姿がまるでのれんのようなことから、そう呼ばれるようになった。晩秋から30~40日かけて仕上げる干し柿は、脊振山の寒暖差の激しい気候によって、やわらかく、もちもちとした食感に仕上がるという。
昔は冬の家業として、農家で行われてきたが、現在では個人で作る家庭も減っている。しかし、駅や道の駅などに、イベントとして飾られることもあるという。そんな干し柿は、食卓にも並んでおり、「干し柿なます」もそのひとつ。ダイコンなどと一緒に干し柿を酢で和えた箸休めの一品だ。

画像提供元:佐賀県観光連盟

<玄界灘沿岸>
玄界灘の恵みを豪華絢爛なくんち料理に

九州北西部の海域・玄界灘は、昔は大陸や朝鮮半島との海上交通の要路でもあった。それにより、伝わった文化も数多く残る。玄界灘には佐賀県も面しており、七ツ釜は景勝地として有名。そして、対馬海流が南西から北東に流れる好漁場であり、その恩恵を受けてきた。かつてはクジラ漁が盛んであったが、現在はタイをはじめイカ、アジ、サバ、ブリ、フグ、イサキなどさまざまな魚種が水揚げされる。
また、特に玄界灘に面した地域では、九州北部に伝わる秋祭り“くんち”が行われており、その際に振る舞われる“くんち料理”には玄界灘で獲れた食材が欠かせない。特にメインとなる「あらの姿煮」は、この地域でアラと呼ばれるクエをダイコンやゆで卵と煮付けにした豪華な料理。商人たちが見栄を張り、より大きく見栄えの良い魚をと作られた。また、祝い事にはタイも欠かせない食材で、焼きや塩釜蒸しなどで食されている。

<有田>
焼き物の郷を支えた汁物「ゆきのつゆ」

佐賀県と言えば“焼き物”のイメージが浸透するほどの焼き物の産地で、有田焼、伊万里焼、唐津焼、輪島焼が有名。中でも有田町の有田焼は、17世紀初頭に製造が始まり、現在も古くからの釜が残っており、特に知られた存在だ。陶磁器の窯焚きは、1000度以上に窯の温度を上げて窯の中の酸素濃度を調整しながら行うもので、焼成には30~50時間もかかると言われている。その間に火の番をする職人たちの夜食として伝わるのが「ゆきのつゆ」という汁物だ。粗く下ろしたダイコンと餅を味噌汁に入れたもので、寒い火の番のお供として食べられていたとされる。また、有田では豆乳に葛やデンプンを加えて固めた「呉豆腐のごま醤油かけ」も郷土料理として伝わる。

画像提供元:佐賀県観光連盟

有田の郷土料理は「ゆきのつゆ」や「呉豆腐のごま醤油かけ」のような素朴なものだけではない。有田は昔から豪勢な町で「質に入れてもうまかもんを食べる」という言葉が伝わるほど、おいしいものに目がなかったと言われている。特にお正月やくんちなどのハレの日には、豪華な食事を食べる習慣があった。

<多良山麓>
米の代用として生活に欠かせなかった麦食文化

佐賀県と長崎県の県境に位置する多良山麓。江戸時代初頭には、佐賀藩が永昌宿(長崎県諫早市)から塩田宿(佐賀県嬉野市)間の総距離約48kmを整備し、多良街道ができた。多良山麓でも、佐賀県で古くから行われている稲作をしていたが、佐賀平野のように水田は多くなかったとされる。そのため、米を食す時も雑炊にしたり、混ぜ物をしたりすることが多かった。また、メインは麦やサツマイモであった。

特に麦作は盛んで、米や粥などの主食がないときには「つんきーだご汁」がよく食されてきた。小麦粉で作っただんごをたっぷりの旬の野菜とともに煮込んだ汁物で、だんごの形状や地域によってその呼び名が変わる。九州内の他の地域でも、寒い日に体を温める料理や、忙しい農作業の合間の食事として食されていた。

佐賀県の主な郷土料理

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