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四国地方 徳島県

徳島県

海と山の恵みを存分に受けて育まれた、個性あふれる食文化

四国地方の東に位置する徳島県は、瀬戸内海、紀伊水道、太平洋の3つの海に囲まれたエリア。世界三大潮流の一つとされる鳴門海峡や、吉野川や那賀川といった大きな河川もあり、水の資源が豊富にある。さらに全面積が4,146.79m2にも及ぶ山々に囲まれ、県内の8割が山地であるなど、豊かな自然に恵まれている(徳島県ホームページ)。温暖な気候で作物も育ちやすく、山と海の恵みを存分に受けた個性豊かな特産品に溢れている。

取材協力:(一社)徳島県調理師会

例えば、生産量日本一で、全国シェアほぼ100%を誇るスダチ(中国四国農政局ホームページより)。徳島市や神山町、佐那河内村、阿南市などで生産されているほか、スダチの花は徳島県の県花に指定されており、県を代表する特産物と言える。また、さつまいも、にんじん、レンコンなども、国内トップシェアを誇る食材として知られている(農林水産省「平成30年 野菜生産出荷統計」)。一方海産物では、鳴門で採れる新鮮なワカメや鯛、ハモなどが特産品として知られている。

豊かな特産品に加えて、律令時代には四国の玄関口として慣れ親しまれてきた歴史がある。淡路島をはさみ、京阪地方との交流を古くから盛んに行っていたため、来訪者をもてなすごちそうや持ち運ぶために保存がきく郷土料理など、先人の知恵と工夫とともに生み出されてきた多様な食文化が育まれている。
食文化

遊山箱

山や河川、海に囲まれ、自然の恵みがもたらした新鮮な食材を使った郷土料理がたくさんあるが、それらの料理を重箱に詰め込んだ「遊山箱」は特に、徳島の食文化を色濃く表している。遊山箱は、江戸時代より徳島に伝わる三段重ねの弁当箱。引き出し式となっており、一段目に巻きずしなどの食事、二段目に煮しめなどのおかず、三段目にようかんなどの甘味を入れて持ち運ぶ。
遊山箱

画像提供元:「とくしまの郷土料理」(徳島県)

主に桃の節句や秋祭りの時期によく食べられていたほか、花見や海辺、川辺などに出かける際にも作られていたという。住んでいる地域や家庭によって入っている料理は異なり、それぞれの郷土の歴史や思い出が詰まっている。
山

剣山系、祖谷山の食文化

東部には日本百名山に選出された剣山系、西部には祖谷山があり、山間部の伝統や文化が色濃く残る。特に農業の歴史は古く、縄文時代の焼畑農耕から始まったと言われている。アワやヒエ、小豆、大豆などさまざまな作物が育てられているが、中でも特に親しまれているのが「そば」。比較的米が育ちにくい場所であることから、そばを主食とする文化が根づいたという。事実、祖谷地域では「そば米雑炊」や「祖谷そば」、そば団子を豆腐やこんにゃくとともに串に刺して焼く「でこまわし」のような、そばを使った郷土料理がよく食べられている。
山
そのほか、山地で採れる山菜や野菜、河川で取れる鮎やあめご、沢ガニといった川魚を使った料理が多くある。また、山を上り下りする際に持ち運びができ、かつ長く保存できる保存食の文化も根づいており、石のように固い「岩豆腐(石豆腐)」を使った「うちがえ雑煮」などもよく知られている。県内のほかのエリアとはまた違った、独自性の高い食文化を持っていると言えるだろう。
食文化

徳島県を吉野川中流域県央部西部南部南部山間部に分け、その食文化の特徴を紹介する。

<吉野川中流域>
サトウキビやそうめん、肥沃な大地が作り出す特産品の数々

徳島を西から東へ流れる県内最大級の一級河川、吉野川。その周辺には独特の岩場や広大な平野などを含む肥沃な土壌が形成されており、質の高い作物の生産が行われている。特に盛んに生産されていたのが、サトウキビ。江戸幕府11代将軍・徳川家斉(いえなり)の時代にサトウキビが徳島に伝わり、さらにこれを元に「阿波和三盆」が作られるようになったとされている。そして、この和三盆を使って作られたのが、「名古屋ういろう」「山口ういろう」と並び、日本三大ういろうと称される「阿波ういろ」である。阿波和三盆の優しい甘みが魅力で、県内外で広く親しまれている。
阿波和三盆
もう一つ、この肥沃な大地のもとで栽培され、特産物として広く知られているのが、つるぎ町半田地区で作られる「半田そうめん」。栽培当初は自給自足や副業を目的として生産されていたが、半田の風土や気候がそうめんづくりに適していたことから生産が盛んになり、全国的に広まっていったとされている。総じて一般的なそうめんよりも少し太めでコシがあり、食べ応えのあるのが特徴ではあるが、各製麺所の標高や使う小麦の種類や配合、塩などによって味わいが少しずつ異なっている。近年は製麺所がブランド化しており、遠方から訪れる根強いファンも多い。
半田そうめん

<県央部>
中枢を担う都市に、昔から根づく優しい郷土の味

東部に位置する徳島市は、県庁所在地。約25万人の人口を持つ中核都市でありながら(徳島市ホームページより)、吉野川を含む大小さまざまな河川が市内を流れる自然豊かなエリアとなっている。
このエリアでよく食べられていたという「茶ごめ」は、いったそら豆とざらめ糖を米とともに炊き上げる甘いご飯。昔は武家屋敷の人々の食事であったが、後に新しいそら豆が採れる時期に、古いそら豆を消費するため、農家で作られる料理として広まっていったとされている。農作業の合間に食べることが一般的だが、地域によっては正月に振る舞ったり、法事の際に仏壇に供えたりする風習もあるという。
茶ごめ

<西部>
そば米雑炊にでこまわし、囲炉裏で作る温かな田舎料理

祖谷山を含む西部では、ゆるり(いろり)で作る汁物や焼き物が親しまれている。例えば「そば米雑炊」は、このエリアで昔から栽培されているそばの実を野菜や肉とともにだしで煮込む。また、「祖谷のでこまわし」は、ゆるりに串を立てて焼き、全体が焼けるようにぐるぐると串を回しながら作る一品。焼いている様子が阿波人形浄瑠璃の「木偶(でく)人形」が頭を回す姿に似ているため、この名が付いたという。
あるいは、「祖谷そば」は、地元のそば粉を100%使って作る、祖谷のソウルフードとも言える存在。麺が切れやすく、太く短くなることから「そばきり」とも呼ばれる。平たい石を熱して、そのうえで魚や野菜を味噌とともに焼く「ひらら焼き」は、平らな石を「ひらら」と呼ぶことに由来しており、その昔は野外で作る料理として親しまれていたとされる。この土地ならではの食材を大切にした郷土料理が多く目立つエリアと言えるだろう。
そば

<南部>
新鮮な魚介の名産地、伊勢エビやボウゼなどの高級魚

南部もまた、水源に恵まれた地域。一級河川の那賀川が流れるほか、紀伊水道や太平洋に囲まれている。阿南市から海陽町まで長く続く「阿南海岸」は景勝地が多くある場所として知られており、観光客も多く訪れる。このあたりでは特に、海や川で取れる魚介をふんだんに使った郷土料理が馴染み深い。
伊勢エビの味噌汁

画像提供元:「とくしまの郷土料理」(徳島県)

魚をそのままの形で残して寿司にする「姿寿司」は、アジやコノシロのほか、徳島南部では「ボウゼ」を使うのが特徴。ボウゼとは徳島の方言でイボダイやウボゼ、シズなどと呼ばれる白身の魚で、焼き物や煮魚、開きなどにして全国で食べられているが、姿寿司は新鮮なボウゼが手に入りやすい環境にある徳島県ならではであるという。
姿寿司
また、ひげや足などが取れてしまい、出荷できなくなった「あがり」と呼ばれる伊勢エビのだしと身を味わう「伊勢エビの味噌汁」は、美波町付近でよく食べられている。9月に伊勢エビ漁の解禁「お小網のくちあき」が始まり、この時期に伊勢エビ祭りが行われ、味噌汁を提供する風習もある。魚介料理以外にも特徴的な郷土料理が多くあるエリアで、例えば、海陽町近辺でよく食べられているという「出世いも」は、米が手に入りにくかった時代におはぎの代わりに作られていたアイデア料理。さつまいもをあんで包み、おはぎのように仕上げていた。
出世いも

画像提供元:徳島県調理科学会 四国大学・髙橋啓子

<南部山間部>
特産品の木頭ゆずを始め、山の幸が豊富なエリア

四国を東西に貫く四国山地や、剣山、海部山脈などの山々に囲まれた南部の山間部は、豊富な雨の恵みを受け、雑穀や野菜、果物などの山の幸を多く生産している。鷲敷町、相生町、上那賀町、木沢村、木頭村が合併した那賀町では、特に気候を生かした高品質な「木頭ゆず」の生産が盛んである。「木頭ゆず」は、国の地理的表示保護制度(GI)にも登録されているほか、地域の郷土料理にもよく使われている。
また、このエリアでよく知られているのが、「はんごろし」。炊いた米をすりつぶす際に、米粒が残る程度に“半分だけすりつぶす”ことから、こう呼ばれている。県内では一時「草もち」として販売されていたが、地元の学生たちから元の名前を使いたいという要望があり、再度呼ばれるようになった。昔から根づく歴史と文化を継承していこうとする動きが、今も続いている。

徳島県の主な郷土料理

  • そば米雑炊/そば米汁

    そば米雑炊/そば米汁

    昔、徳島の祖谷(いや)地方は山々に囲まれており、米が育ちにくい気候とされていた...

  • ボウゼの姿寿司

    ボウゼの姿寿司

    秋祭りの時季、徳島ではさまざまな魚をそのままの形で残して寿司にする「姿寿司」が...

  • 祖谷のでこまわし

    祖谷のでこまわし

    一口サイズのじゃがいも、そば団子、岩豆腐、丸こんにゃくを串に刺して味噌だれをつけ...

お問合せ先

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