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農林水産省

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食とくらしの「今」が見えるWebマガジン

特集 1 「花粉」の少ない森林づくり

森林と人の新たな付き合い方

特定の植物の花粉が原因となる花粉症は、
社会的に大きな問題となっています。
これまで行われてきた花粉発生源対策を
さらに効果的に行えるよう、
2024年からは森林と人の付き合い方を変える、
新たな取り組みを開始しています。

スギやヒノキだけじゃない 森林と花粉症

花粉症を引き起こす植物は様々ありますが、現在、国民の関心が高いスギやヒノキに関する取組が進んでいます。飛散時期は植物により異なるため、対策には注意が必要です。

花粉飛散カレンダー

スギ:2月~6月 ヒノキ科:2月~5月 ハンノキ属(カバノキ科):3月~4月 シラカンバ(カバノキ科):4月~6月 イネ科:4月~10月 ブタクサ属(キク科):8月~10月 ヨモギ属(キク科):8月~10月 カナムグラ(アサ科):8月~10月|出典:環境省 花粉症マニュアルを加工して作成。主な花粉の飛散する時期は地域によって多少違いがあります。

これまでの花粉発生源対策

2001年の「森林・林業基本計画」により花粉症対策の推進が明記され、スギ花粉対策に取り組むことが重要であるとの観点から、各種取り組みが進められています。 01研究開発 花粉の少ない品種を開発し、苗木を生産。 02普及・啓蒙 花粉の少ない苗木の植栽や広葉樹の導入による針広混交の育成複層林への誘導等。 03技術開発 ドローン等を活用し、効率的かつ高精度な着花量観測及び花粉飛散量予測に役立つ技術の開発を推進。

花粉の少ないスギ苗木の生産量などの推移

スギ苗⽊の⽣産量 花粉の少ないスギ苗⽊の⽣産量 花粉の少ない苗⽊のシェア 出典:農林水産省ホームページ「花粉の少ないスギ苗木の生産量などの推移」

花粉の発生源を減らす 新たな取り組み

「伐って、使って、植えて、育てる」ことで森林資源の循環利用を推進しながら、花粉発生源となるスギ人工林を、2033年に約2割減少させる新たな目標に向かって、花粉の少ない森林づくりへの取り組みが進んでいます。

伐って 都市周辺のスギ人工林伐採重点区域において、集中的に伐採・植替えを推進します。 伐採を加速化し植替えを推進

使って スギを使った製品の開発を進めるとともに、地域の工務店にスギの利用を促進します。 スギ材需要の拡大 建築資材としてスギ材を活用

植えて 花粉の少ない苗木の生産施設を整備して、植替えに必要な苗木を準備します。 花粉の少ない苗木の生産拡大 伐採、植替え等の加速化

育てる 植えた苗木が健全に成長するように、下刈りや間伐など必要な手入れを効率的に行います。 適切な作業による生産性の向上

スギ人工林伐採重点区域の設定

人口の多い都市部周辺などにおいて重点的に伐採・植替え等を実施する区域として、スギ人工林伐採重点区域が2024年2月に設定された。スギ人工林伐採重点区域においては、森林の集約化を進めるとともに、伐採・植替えの一貫作業の実施やそのために必要な路網整備を推進することとしている。

品種開発の最前線

森林研究・整備機構 森林総合研究所林木育種センターの担当者に、スギの品種開発から普及までのプロセスについて話を聞きました。今後主流となる最新品種も紹介します。

開発された品種 花粉症対策のために開発された品種は、少花粉スギ、低花粉スギ、無花粉スギ、特定母樹と4種類に分類されます。特定母樹とは、成長スピードが速く従来のスギに比べて花粉量がおよそ半分以下の品種です。 少花粉スギ品種「神崎15号」

品種改良の流れ 全国の森林から、花粉飛散のもととなる雄花が少ないスギや雄花がついていても花粉がない無花粉のスギを探し出した後、およそ5年をかけてその特性を確認します。さらに、こうしたスギの交配を重ねることで、新たな品種の開発を進めます。 原種苗木増産のための「原種増産施設」

開発した品種の普及 開発した品種は原種として保存するとともに、さし木やつぎ木で増やして各都道府県に提供され、採種園や採穂園から種苗が生産されます。特定母樹はさらなる普及を目指し、民間事業者による種苗の生産も進められています。 優良原種を保存する「原種園」 写真提供:国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所林木育種センター

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 林木育種センター 育種部 育種第二課 育種研究室長 坪村美代子さん 広島県生まれ。2005年から林木育種センターに勤務し、スギ・ヒノキの花粉症対策に関する研究を行っている。

世界と日本における林木育種の展開

林木育種事業は、世界各地で長年取り組まれ、20世紀中頃にスウェーデンで集団選抜育種法が確立しました。日本では江戸時代から望ましい性質を示す個体を母樹とした苗木の育成が地域毎に推奨されてきました。約70年前からは国家的規模で林木育種事業を開始。集団選抜育種法により、スギでは第3世代の選抜に向けた調査・研究が進むなどの効果を発揮しています。

今週のまとめ

花粉の少ないスギを開発するなど
花粉症への対策が進んでいます。
今後、森林資源の循環利用を推進し、
花粉の少ない森林へと
転換することで、
さらなる効果が期待できそうです。

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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