動物に使用する抗菌性物質について
更新日:令和5年10月12日
細菌による感染症は、人の健康にとって大きな問題です。人類の歴史において、感染症は人口の激減など大きな影響を及ぼしてきました。動物も、細菌による感染症により、成長が遅くなったり、死んでしまったりします。
今から100年近く前、細菌を殺したり、その生育を止めたりすることができる物質が発見され、感染症を治療できるようになりました。これらの物質を「抗菌性物質」といいます。抗菌性物質は、感染症の治療方法として極めて重要ですが、使われすぎたり、正しく使われないと、感染症の原因となる細菌に対して効果がなくなることがあります。
細菌を殺したり生育を止めたりする効果がなくなることを日本では「薬剤耐性」といいますが、英語では「抗微生物薬耐性」(Antimicrobial Resistance、AMRと略)と呼んでいます。
この薬剤耐性問題は、感染症対策に関連して、国連総会で各国の閣僚たちが議論するほどに世界中の関心を集めています。
このページでは、薬剤耐性における農林水産省の取組などについてアクションプランの6つの目標別に説明します。
A.. 薬剤耐性対策をめぐる情勢
B.. 日本の取組概要
日本では内閣官房を取りまとめ役として厚生労働省を始め、農林水産省や内閣府食品安全委員会等の関係省庁が連携し、薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(PDF:1,669KB)[外部リンク]に基づき、AMR対策を推進しております。アクションプランは、人、動物、農業分野などが分野の垣根を越えて取り組むべき課題を6つの目標に分けて示しています。
関係省庁が目標を達成するために毎年進捗を評価しながら取組を進めることになっています。
個別の取組の詳細は以下のリンクよりご確認ください。
・薬剤耐性対策普及啓発・優良事例動画
・リーフレット(生産者・獣医師向け/畜産関係者・愛玩動物医療関係者向け)
・薬剤耐性対策国民啓発会議
・活動表彰
1.普及啓発
薬剤耐性菌普及啓発・優良事例動画
「薬剤耐性に関する基礎的事項」、「抗菌剤の慎重使用の考え方」、「薬剤感受性試験」および「養豚生産の取組」に関する動画を作成しています。
関連通知及びリーフレット
農林水産省では、アクションプランに沿った取り組みを推進するため、抗菌剤の慎重な使用のさらなる周知・徹底等を目的とした以下の通知を発出するとともに、リーフレットを作成しています。
- 【関連通知】薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023-2027)の策定に基づく薬剤耐性対策の推進について(令和5年5月31日)(PDF : 346KB)(別記様式(別記様式)動物用医薬品の使用記録表(EXCEL : 21KB)
- 【関連通知】動物用抗菌性物質製剤の慎重使用の徹底及び薬剤耐性対策における取組事例の収集について(平成29年10月24日)(PDF : 269KB)
- 【関連通知】薬剤耐性対策行動計画の周知と動物用抗菌性物質の慎重使用の徹底について(平成28年10月19日)(PDF : 80KB)
- 【関連通知】愛玩動物医療分野における薬剤耐性対策について(平成28年10月19日)(PDF : 81KB)
生産者及び獣医師向けリーフレット
生産者向け
畜産関係者向けリーフレット及び愛玩動物医療関係者向けリーフレット
畜産関係者向け
豚のMRSAに関するリーフレット

(PDF版:457KB)(パワーポイント版:841KB)
薬剤耐性対策の今を知る会~世界の動き、日本の動き~
薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議
全国的な普及啓発活動を推進し、薬剤耐性に関する知識・理解を深めるため、「薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議」を開催しています。
- 薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議の開催及び薬剤耐性(AMR)対策推進月間(11月)の設定について[外部リンク]
- 「第1回薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議」について[外部リンク]
- 「第2回薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議」について[外部リンク]
- 「第3回薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議」について[外部リンク]
- 「第4回薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議」について [外部リンク]
薬剤耐性(AMR)対策普及啓発活動表彰
”Combat AMR”
内閣官房、文部科学省、厚生労働省及び農林水産省では、薬剤耐性(AMR)対策の普及啓発活動を広く募集し、優良事例を表彰することで、対策に係る自発的な活動を喚起奨励すること等により、AMR対策の全国的な広がりを促進することを目的として 「薬剤耐性(AMR)対策普及啓発活動表彰」を行っています 。
応募に関する詳細は以下のサイトをご覧ください。
第3回薬剤耐性(AMR)対策普及啓発活動表彰に係るご案内[外部リンク]
第1回、第2回の様子は以下のサイトをご覧ください。
2.動向調査・監視
薬剤耐性モニタリング
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動物用抗菌剤の販売高
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人用抗菌剤の販売量調査結果
薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書
- 薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2017(PDF:2,182KB、外部リンク )
- 薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2018(PDF : 4,325KB、外部リンク)
- 薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2019(PDF: 3,255KB、外部リンク)
- 薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2020(PDF: 4,934KB、外部リンク)
- 薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2021(PDF: 5,550KB、外部リンク)
- 薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書2022(PDF:5,068KB、外部リンク)
3. 感染予防
飼養衛生管理基準
抗菌剤に頼らない畜水産物の生産体制の推進
動物用医薬品対策事業
飼養衛生管理情報通信整備事業委託費
4. 適正使用・慎重使用

リスク管理措置の概要
慎重使用に関する基本的な考え方・パンフレット
獣医師及び生産者を中心とした、抗菌剤を使用する際の「責任ある慎重使用」の徹底に関する基本的な考え方を公表しています。
畜産物生産における動物用抗菌性物質製剤の慎重使用に関する基本的な考え方について(PDF:301KB)(平成25年12月24日)
生産者向け
抗菌剤の慎重使用に資するため、ガイドブックを作成しています。
牛乳房炎抗菌剤治療ガイドブック
(全体版)(PDF : 4,453KB)
【分割版】
その1 (PDF : 2,415KB)
その2 (PDF : 2,353KB)
その3 (PDF : 2,393KB)
その4 (PDF : 1,765KB)
愛玩動物関係者向け
愛玩動物における
抗菌薬の慎重使用の手引き-2020-
(PDF : 3,726KB)
【分割版】
愛玩動物における
抗菌薬の慎重使用の手引き-2020-
(表紙~p15)(PDF : 1,244KB)
愛玩動物における
抗菌薬の慎重使用の手引き-2020-
(p16~p31)(PDF : 1,264KB)
愛玩動物における
抗菌薬の慎重使用の手引き-2020-
(p32~裏表紙)(PDF : 1,973KB)
家畜における抗菌性物質のリスク管理策定指針
農林水産省では、リスク管理措置を策定する上で必要となる指針を定め、これに基づいてリスク管理措置を策定、実施しています。
動物用抗菌性物質製剤
飼料添加物
動物に使用する抗菌性物質のリスク管理措置ー食品安全委員会の評価結果等の活用
農林水産省は、2003年に当時使用できる抗菌性飼料添加物及びそれらと同系統の動物用の抗菌性物質製剤について、その指定の是非を検討するため26成分のリスク評価を食品安全委員会に諮問しました。
その評価結果も参考にしながら、農林水産省は以下のリスク管理措置を講じています。
動物用抗菌性物質製剤と飼料添加物の食品安全委員会による評価結果
(リスクの程度をクリックすると食安委の評価結果のページにとびます)
動物用抗菌性 |
リスクの程度と |
農水省による |
フルオロキノロン剤 (牛及び豚用) |
中等度 第5版:令和5年7月28日 (平成22年3月25日) |
・第一次選択薬1が効かなかった場合に使うよう添付文書や容器に記載 薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングを強化(通知(PDF:77KB)) |
ツラスロマイシン製剤 (豚用) |
中等度 平成24年9月24日 |
・第一次選択薬が効かなかった場合に使うよう添付文書や容器に記載 薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングを強化(通知(PDF:73KB)) |
ピルリマイシン製剤 (牛用) |
低度 平成25年2月4日 |
・薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングの継続(通知(PDF:59KB)) |
フルオロキノロン剤 (鶏用) |
中等度 平成25年11月25日 |
・第一次選択薬が効かなかった場合に使うよう添付文書や容器に記載 薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングを強化(通知(PDF:92KB)) |
ガミスロマイシン製剤 (牛用) |
低度 平成26年9月2日 |
・人の医療上重要な抗菌性物質に分類されているため、第一次選択薬が効かなかった場合に使うよう添付文書や容器に記載 薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングを強化(通知(PDF:115KB)) |
セフチオフル製剤 (牛及び豚用) |
中等度 平成27年4月14日 |
・第一次選択薬が効かなかった場合に使うよう添付文書や容器に記載 薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングを強化(通知(PDF:104KB)) |
ツラスロマイシン製剤 (牛用) |
低度 第2版:令和5年8月1日 (平成27年7月14日) |
・人の医療上重要な抗菌性物質に分類されているため、第一次選択薬が効かなかった場合に使うよう添付文書や容器に記載 薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングを強化(通知(PDF:62KB)) |
フロルフェニコール製剤 (牛及び豚用) |
無視できる程度 第2版:令和元年8月27日 (平成28年1月12日) |
・販売量のモニタリングの継続 |
セフキノム製剤 (牛及び豚用) |
中等度 平成28年7月26日 |
・第一次選択薬が効かなかった場合に使うよう添付文書や容器に記載 薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングを強化(通知(PDF : 114KB)) |
硫酸コリスチン製剤 (牛及び豚用) |
低度 第2版:令和3年2月2日 中等度 第1版:平成29年1月17日 |
・第一次選択薬が効かなかった場合に使うよう添付文書や容器に記載 薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングを強化(通知(PDF : 122KB)) ・リスク管理措置の継続(通知(PDF:113KB)) |
ガミスロマイシン製剤 (豚用) |
中等度 平成29年7月25日 |
・第一次選択薬が効かなかった場合に使うよう添付文書や容器に記載 薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングを強化(通知(PDF : 150KB)) |
マクロライド系抗生物質 (エリスロマイシン、タイロシン、チルジピロシン、チルバロシン、チルミコシン、ミロサマイシン) |
低度 第2版:令和元年6月4日 (平成31年2月5日) |
・薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングの継続 |
テトラサイクリン系抗生物質 (オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、ドキシサイクリン) |
低度 平成31年3月26日 |
・薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングの継続 |
ビコザマイシン | 無視できる程度 令和2年5月19日 |
・販売量のモニタリングの継続 |
スルフォンアミド系合成抗菌剤 (スルファジミジン、スルファジメトキシン、スルファドキシン、スルファメトキサゾール、スルファモノメトキシン) |
無視できる程度(単剤) 低度(トリメトプリム又はオルメトプリムとの配合剤) 令和3年6月22日 |
・薬剤耐性菌の発生状況のモニタリングの継続 |
飼料添加物 |
リスクの程度と |
リスク管理措置 |
モネンシンナトリウム | 無視できるリスク 平成18年9月21日 |
モニタリングの継続 |
デストマイシンA | 評価取下げ2 平成22年2月4日 |
平成22年2月4日 指定取消 |
ノシヘプタイド | 無視できるリスク 平成24年9月24日 |
モニタリングの継続 |
センデュラマイシンナトリウム | 無視できるリスク 平成25年4月22日 |
モニタリングの継続 |
ラサロシドナトリウム | 無視できるリスク 平成25年4月22日 |
モニタリングの継続 |
サリノマイシンナトリウム | 無視できるリスク 平成25年6月24日 |
モニタリングの継続 |
ナラシン | 無視できるリスク 平成25年6月24日 |
モニタリングの継続 |
フラボフォスフォリポール | 無視できるリスク 平成25年11月11日 |
モニタリングの継続 |
アビラマイシン | 無視できるリスク 平成26年1月7日 |
モニタリングの継続 |
アンプロリウム | 明らか不要3 平成25年9月9日 |
モニタリングの継続 |
エトパベート | 明らか不要3 平成25年9月9日 |
モニタリングの継続 |
ナイカルバジン | 明らか不要3 平成25年9月9日 |
モニタリングの継続 |
クエン酸モランテル | 明らか不要3 平成25年9月9日 |
モニタリングの継続 |
セデカマイシン | 評価取下げ2 平成26年2月7日 |
平成26年2月6日 指定取消 |
エンラマイシン | 無視できるリスク 平成26年10月14日 |
モニタリングの継続 |
バージニアマイシン | 中等度 平成28年5月24日 |
平成30年7月1日 指定取消 |
硫酸コリスチン | 中等度 平成29年1月17日 |
平成30年7月1日 指定取消 |
デコキネート | 評価取下げ2 平成30年6月12日 |
平成30年7月1日 指定取消 |
エフロトマイシン | 評価取下げ2 平成31年1月9日 |
平成30年12月27日 指定取消 |
リン酸タイロシン | 低度 平成31年2月5日 |
令和元年5月1日 指定取消 |
クロルテトラサイクリン | 低度 平成31年3月26日 |
令和元年12月27日 指定取消 |
アルキルトリメチルアンモニウムカルシウムオキシテトラサイクリン | 低度 平成31年3月26日 |
令和元年12月27日 指定取消 |
ハロフジノンポリスチレンスルホン酸カルシウム | 無視できるリスク 令和2年2月4日 |
モニタリングの継続 |
ビコザマイシン | 無視できるリスク 令和2年5月19日 |
モニタリングの継続 |
亜鉛バシトラシン | 無視できるリスク 令和3年4月13日 |
モニタリングの継続 |
スルファキノキサリン | 無視できるリスク 令和3年6月22日 |
モニタリングの継続 |
1 病気の原因となっている細菌に対して有効な抗菌性物質のうち、有効な細菌の種類が少ない抗菌性物質を第一次選択薬といいます。
2 既に製造と販売が行われておらず、今後とも製造等の見込みがないことから飼料添加物としての指定を取り消したため、評価依頼を取り下げています。
3 人の健康に及ぼす影響の内容や程度が明らかであったため、評価不要と判断されています。
5. 研究開発
研究成果
現場の獣医師の適切な抗菌性物質の選択に資するよう、研究結果を踏まえ、牛及び豚の呼吸器病並びに牛の乳房炎における 治療ガイドブック を作成しています。
6. 国際協力
動物医薬品検査所における取組み
動物医薬品検査所は、OIEコラボレーティング・センターとして、アジア諸国の薬剤耐性検査担当者に対する技術研修・セミナーを実施しています。
動物医薬品検査所の薬剤耐性に関する取組みの詳細についてはこちら
(参考)WHO国際行動計画
WHOは、2015年5月、薬剤耐性に関する国際行動計画を採択しました。薬剤耐性対策は、世界的に人医療、動物その他の関係分野が連携して対応する課題であるとされています。
WHOは、行動計画を踏まえ、薬剤耐性菌に関する理解を深め、意識向上をはかるため、毎年11月の1週間を、World Antibiotic Awareness Weekとしています(2021年は11月18日から24日まで)。
それに対応して、OIEにおいても動物分野での取組を行っています。
(参考)コーデックスのガイドライン等
Codexは、薬剤耐性菌の問題に対して、リスクアナリシスの考え方に基づいてリスク評価を行った上で、リスクの程度に応じたリスク管理措置を講じることが重要であるとしており、薬剤耐性対策に関する行動規範(Code of Practice)やガイドラインを定めています。
- 薬剤耐性対策に関する行動規範(英文)(PDF : 449KB)
- 薬剤耐性のリスクアナリシスに関するガイドライン (英文)(PDF : 964KB)
- 薬剤耐性のモニタリング及びサーベイランスに関するガイドライン(英文)(PDF : 415KB)
(参考)OIEにおける取組み
OIEは、薬剤耐性菌対策に関する陸生及び水生動物衛生規約を策定しています。
お問合せ先
消費・安全局畜水産安全管理課
担当者:薬剤耐性対策班、飼料安全基準班
代表:03-3502-8111(内線4532)
ダイヤルイン:03-6744-2103