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農林水産省

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その4:お肉の自給率

1. はじめに

今回は、お肉の自給率についてお話します。お肉は、日本人に不足しがちな必須アミノ酸(リジン等)などの栄養価としても重要で、明治初期から文明開化の象徴として奨励されましたが、日々の生活に定着したのは所得水準が大幅に向上した戦後になってからのことです。

今回の連載では、私たちの食生活を支えているお肉について、消費者の食生活の視点とお肉の生産者の視点から紹介していきます。

2. 経済成長とお肉

お肉は、経済成長によって国民の所得水準が向上するにつれて1人当たりの消費量が伸びていくと言われています。我が国の場合も、お肉の消費が最も伸びたのは高度経済成長期(1960年頃~70年代初め)で、その後の安定成長期も増加が続きました。食生活の多様化によってお肉や油脂の消費が増加するとともに、お米の消費が減少しており、昭和35(1960)年度と令和元(2019)年度の1人当たりの消費量を比較すると、お肉(牛肉・豚肉・鶏肉)の消費量は約10倍に増加した一方で、お米の消費量は半減しています。

(図1)1人・1年当たり消費量の変化

(図1)1人・1日当たり消費量の変化

このような旺盛な消費者ニーズに応えるため、牛肉・豚肉・鶏肉の国内生産も増大してきましたが、国内生産で応えきれない分を輸入で賄うこととなりました。

では、牛・豚・鶏に分けて見てみましょう。

3. 牛肉

牛肉は、外食・中食で消費される割合が高く、昭和35年度の1人当たりの消費量は年間で約1kgでしたが、食生活の変化とともに10年で2倍、20年で3倍、30年で5倍と増えていき、平成12(2000)年度には1人当たり7.6kgに達しました。右肩上がりに増えた消費に転機が訪れたのはBSE(牛海綿状脳症)が国内で初めて確認された平成13年のことです。その後、主要な輸入先だった米国でもBSEが発生したことで、消費が急激に減少し、減った分の需要は豚肉や鶏肉に置き換わりました。令和元年度の1人当たり消費量は6.5kgで、ピーク時の水準には至っていません。

生産面では、昭和35年度の時点では国内消費のほぼ全てを国産で賄っていました。その後、消費の増大に合わせて一戸当たりの飼養頭数を増やすなどして国内生産も2倍、3倍と増大してきましたが、消費の急激な伸びには追い付けず、不足分を輸入の増加で補っています。国産牛肉は大まかには和牛とそれ以外(乳用種・交雑種)に分けられますが、近年は和牛が増加する一方で乳用種・交雑種が減少しているため、生産量はおおむね横ばい傾向にあり、令和元年度の牛肉の自給率は35%(重量ベース)で、国産が国内需要の約3分の1を満たしています。

(図2-1)牛肉の国内生産量・輸入量の推移

(図2-1)牛肉の国内生産量・輸入量の推移

4. 豚肉

豚肉は旺盛な需要に支えられて順調に消費が伸びており、ほぼ右肩上がりで増加を続けていることが特徴です。豚肉の昭和35年度の1人当たり消費量は年間で約1kgでしたが、令和元年度は10倍以上の12.8kgとなっています。

需要の増加に応えるべく増産が行われてきましたが、増え続ける消費に対応できない分は輸入を増やすことで補っています。また、家畜疾病、労働力不足、畜産環境問題等の影響から思うように国内生産を増やすことができないことや、輸入品を多く利用する外食の需要が高まったことも背景にあります。令和元年度の自給率は49%(重量ベース)であり、国産が国内需要の約半分を満たしています。

(図2-2)豚肉の国内生産量・輸入量の推移

(図2-2)豚肉の国内生産量・輸入量の推移

5. 鶏肉

鶏肉の消費も、ほぼ一貫して増加を続けています。昭和35年度の1人当たり消費量は年間で約1kgでしたが、令和元年度の消費量は10倍以上の13.9kgまで増加しました。平成24年度に豚肉を追い越し、最も多く消費されているお肉です。

国産の鶏肉は、健康志向の高まりや国産志向から人気があります。こうした消費者ニーズに応えるため、国内生産を増やしてきましたが、近年は加工・業務用需要(サラダチキン等)が高まったこともあり、安価な輸入品も増加しています。鶏肉の令和元年度の自給率は64%(重量ベース)であり、国産が国内需要の約3分の2を満たしています。

(図2-3)鶏肉の国内生産量・輸入量の推移

(図2-3)鶏肉の国内生産量・輸入量の推移

6. 畜産経営と飼料

ここで少し視点を変えてみます。お肉の国内生産にどうしても欠かせないのが輸入飼料(とうもろこし等)です。牛肉1kgの生産に必要な穀物の量はとうもろこし換算で11kg、同じく豚肉では6kg、鶏肉では4kgとなります。これを面積に置き換えると、現状の畜産物の生産量を維持するためには広大な農地が必要となります。

我が国の国土面積3,780万haのうち7割弱を森林が占めており、残りの面積を農地・工業用地・住宅地で分け合っている状況にあります。令和2年の農地面積は437万haと、国土面積のおよそ1割を占めるに過ぎず、現在の私たちの食生活を維持するために、小麦や大豆なども含めると959万ha相当(国内の農地の2倍以上)の海外の農地を使用していることになります。

旺盛な需要に応えてお肉の生産を増やしていくためには、将来にわたり飼料を安定的に供給することが欠かせません。このため、海外飼料の安定的な輸入の確保だけでなく、牧草や青刈りとうもろこしなどの国産飼料の増産、食品廃棄物等を利活用するエコフィードや飼料用米の利用拡大などにも取り組んでいます。

7. 飼料自給率

食料自給率を計算する際、品目ごとには重量ベース、全体は共通のものさしとしてカロリーベースと生産額ベースを用いるというお話を連載の初回にしました。

畜産物の生産において輸入飼料に頼らざるを得ない実態を反映するため、畜産物の自給率は、飼料自給率を乗じることで輸入飼料を用いて生産した分を除いて計算しています。

飼料自給率は、国内に供給された飼料に対する国内生産された飼料の割合を示しており、栄養価に換算した「TDN(可消化養分総量)」という方法で計算しています。令和元年度の飼料自給率は25%となっており、内訳をみると牧草などの粗飼料は国産が77%を占める一方で、とうもろこしなどの濃厚飼料では国産が12%にとどまります。

飼料自給率を反映した自給率は、牛肉は9%、豚肉は6%、鶏肉は8%となっており、先ほどの説明したそれぞれの自給率に比べて低い数字になっています。国産飼料の拡大は、食料自給率向上にも大きく関係しているのです。

他方で、畜産物は安価な飼料を使って高付加価値生産が行われ、国産品は輸入品より高値で取引されています。このため、卵や乳製品を含めた畜産物全体でみると、カロリーベースの自給率が15%であるのに比べて、生産額ベースでは56%と高くなっており、全体の3割近くを占めているという側面もあります。

8. 食料国産率目標の設定のねらい

2020年3月に定めた新しい食料・農業・農村基本計画では、食料自給率に加えて新たに「食料国産率」という指標を設定しました。

食料自給率は、飼料自給率を反映することにより国内で生産可能な部分を厳密に評価することができます。一方で、輸入飼料を用いて国内生産を行った畜産物が国産とみなされないため、需要に応じて増産に取り組んできた畜産農家の努力が反映されず、また、日ごろ国産の畜産物を購入している消費者の実感とも合わないという課題がありました。

そこで、飼料が国産か輸入かにかかわらず、国内でお肉をどれだけ生産したかを評価するため、飼料自給率を反映しない「食料国産率」についても目標設定することとしました。食料国産率はカロリーベースで47%、生産額ベースで69%となっています。令和12(2030)年度にそれぞれ53%、79%まで引き上げることを目標に掲げています。

国産飼料の利用拡大により飼料自給率を向上させていくことと、お肉の国内生産量の増加を通じた「食料国産率」の向上の両方を達成していくことで、食料自給率の向上が図られます。

9. おわりに

今回はお肉の自給率の話をしましたが、いかがだったでしょうか。普段何気なく食べているお肉の生産の背景について、理解を深めていただけたなら幸いです。

次回は、野菜のお話をさせていただく予定です。

お問合せ先

大臣官房政策課食料安全保障室

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