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農林水産省

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その5:野菜の自給率

1. はじめに

今回の連載では野菜の自給率についてお話します。野菜は、ビタミン、ミネラル、食物繊維等が豊富に含まれた重要な栄養供給源であり、私たちの生活に欠かせない食材です。近年の健康志向の高まりから、野菜の効能や栄養に関心が集まっていますが、その歴史、生産や消費の動向、そして自給率についてご紹介していきます。

2. 日本で栽培されている野菜

現在、日本では様々な野菜が栽培されており、生産量等が農林水産省の統計で把握されているものだけで約90品目にのぼります。ですが、日本原産のものは、やまのいも(自然薯)、わさび、みつば、みずな等それほど多くはなく、私たちが普段食べている野菜のほとんどは、欧米や中国大陸から日本に持ち込まれたと言われています。

全国的に流通し、特に消費量が多い野菜を例として見てみますと、だいこん、さといも、ねぎ、きゅうり、なすの5品目は縄文から平安時代にかけて渡来したとされ、ばれいしょ、キャベツ、ほうれんそう、トマトの4品目は江戸時代に、にんじん(西洋種)、はくさい、レタス(結球種)、たまねぎ、ピーマンの5品目は明治時代以降に日本に伝わったと言われています。(*1)

日本に導入された経緯は様々であり、平安時代には遣隋使や遣唐使を介して仏教とともにごぼう、にら、さやえんどう、らっきょうといった中国やインド、ペルシャなどの作物が、戦国から江戸時代には南蛮貿易によりセルリー、アスパラガス、日本かぼちゃ、スイートコーン、さやいんげん、パセリといったヨーロッパや新大陸産の作物が日本に入ってきたとされています。明治維新以降には、政府がカリフラワー、ブロッコリー、クレソン等の欧米諸国の作物を積極的に導入・普及させました。(*2)

こうして持ち込まれた野菜は、日本の気候・風土や日本人の嗜好になじむよう品種改良を重ねて栽培が広がりました。品種改良は公的機関だけでなく各地の農家・民間育種家の手によっても行われ、病気に強く味の良い品種が年々改良されることにより、私たちの食卓に様々な野菜が並ぶようになりました。

3. 野菜の自給率

野菜の生産量は、高度経済成長期の1960年代から1980年代半ばにかけて、人口増加による需要の拡大や施設園芸の拡大を背景に増加していきますが、1980年代後半から農業者の高齢化や労働力不足、漬物をはじめとする需要の減少などを理由に減少の道をたどりました。(図1)

(図1)野菜の国内生産量と輸入量の推移

(図1)野菜の国内生産量と輸入量の推移

令和元(2019)年の野菜の生産量は1,166万トンですが、ピークである昭和57(1982)年の1,699万トンと比較すると31%減少しています。漬物野菜であるだいこん、はくさい、きゅうり、なすが減少の大部分を占めており、その中でも、だいこん、はくさいは重量野菜で収穫作業の労働負担が大きく、農業者の高齢化等とともに生産量が大きく減少しました。一方で、生産量が増えている野菜もあり、サラダや炒め物に合うブロッコリーや小松菜などは、収穫作業の労働負担も小さく、需要の伸びに応じて生産量が増えてきました。このように、需要が伸びている野菜に生産を転換して収益の向上を図る努力によって、昭和57年から令和元年の間に野菜の産出額は15%増加しています。

野菜の輸入量を見てみると、食の簡便化などのライフスタイルの変化、円高やデフレの影響も受け、1980年代以降、加工・業務用の冷凍・乾燥野菜や缶詰などの加工品を中心に輸入が増加し、近年は300万トン程度で推移しています。(図1)

消費の面では、野菜の1人1年当たり消費量をみると、1960年代までは増加していましたが、昭和43(1968)年を境に減少に転じ、令和元年はピーク時の124.3kgに比べて約3割少ない90.0kgとなっています。(図2)

(図2)野菜の消費量の推移(1人1年あたり)

(図2)野菜の消費量の推移(1人1年あたり)

トマトやピーマンのように、食の欧米化によって1人1年当たり購入量が昭和40(1965)年の1.2倍程度まで増加している野菜もありますが、漬物野菜であるだいこん、はくさい、きゅうり、なすの1人1年当たり購入量が4~6割減少していることにより、一般的に家庭用の野菜全体の消費量は減少する傾向にあります。(*3)

一方で、スーパー、コンビニ、デパ地下等でのサラダをはじめとした加工用野菜や、外食チェーン店による大量・計画仕入れが前提の業務用野菜の需要が拡大していますが、家計消費用の野菜は国産割合がほぼ100%であるのに対して、加工・業務用の野菜は国産割合が約7割となっています。

このような生産・消費の変化に伴い、野菜の自給率(重量ベース)は、昭和40年度には約100%でしたが、近年は80%程度で推移しています。

(1) 国内生産量が多い野菜

国内生産量が多い野菜としては、キャベツ、だいこん、たまねぎ、はくさい、トマト、レタス、にんじん、ねぎ、きゅうりが上位に並びます。

野菜といっても、根菜類、葉茎菜類、果菜類など形態が多様で、品目によって重量当たりのカロリーや単価が大きく異なります。生産量上位の品目の中では、にんじん、たまねぎ、ねぎ、キャベツ、トマトなどは重量当たりのカロリーが高く、ねぎ、トマト、きゅうり、レタス、にんじんなどは重量当たりの単価が高い野菜となっています。

(2) カロリーベースの自給率への寄与度が大きい野菜

野菜は比較的カロリーが低く、例えば葉物野菜のレタスでは100gあたり12kcalしかありません(お米は358kcal、牛肉は約280kcal)。このため、カロリーベース食料自給率38%のうち野菜による寄与度は約2%となっています。

また、重量当たりのカロリーだけを見ると、にんにく(100g当たり136kcal)やらっきょう(同118kcal)などが比較的高いですが、これらは生産量(重量)がそれほど多くはありません。国内生産量が多い野菜の中で重量当たりのカロリーも高いキャベツ、たまねぎ、だいこん、にんじん等の重量野菜は、カロリーベース食料自給率への寄与度が大きく、これら4品目だけで国内で生産された野菜全体のカロリーの4割近くを占めています。

(3) 生産額ベースの自給率への寄与度が大きい野菜

一方、野菜は、農産物全体の産出額の約4分の1を占める品目で、生産額ベース食料自給率66%のうち野菜による寄与度は15%程度となっています。

重量当たりの単価(生産者価格)だけ見ると、にんにく、さやえんどう、しそ、アスパラガスが1,000円/kgを超えて高いですが、これらは生産量(重量)が多いほうではありません。国内生産量が多い野菜の中で単価も300円/kg前後と高めのトマト、ねぎ、きゅうりや、単価が1,000円/kg超で生産量も一定程度あるいちごが、生産額ベース食料自給率への寄与度が大きく、これら4品目だけで野菜の国内生産額の3割近くを占めています。

(4) 輸入量が多い野菜

輸入量が多い野菜は、生鮮品では、たまねぎ、にんじん、かぼちゃが多く、たまねぎが全体の3割強を占めます。たまねぎやにんじんは、加工原料用や業務用で多く使われています。

例えば、カット用のにんじんであれば加工歩留まりが良い大型規格のものが好まれ、国産の大型規格のものが不足しがちになる4~7月の時期に輸入が多くなります。また、たまねぎは比較的長期間貯蔵が行われ保存がきくこと、たまねぎをむく加工などに手間がかかることから輸入の需要が高くなっています。

その他、加工品として、トマト(ピューレ、ジュース等)、スイートコーン(冷凍、缶詰)、にんじん(ジュース)などが輸入されていますが、食料自給率の計算では、これらも生鮮品の重量に換算して輸入量に計上されています。

4. 自給率向上に向けた取組み

高度経済成長期の食生活の変化により、野菜の食べ方は、漬物や煮物だけでなく、サラダや炒め物などバラエティが大きく広がりました。その結果、漬物として多くが消費されていただいこん、はくさいなどの需要が減少し、サラダや炒め物などに合うトマト、レタス、ピーマン、ブロッコリーなどの需要が増えましたが、生産者は、こうした変化に対応して消費者に求められる野菜の生産に取り組んできました。

また、日本で栽培されている野菜の由来について最初にお話しましたが、ロマネスコ、ズッキーニ、パプリカなど、近年まで日本ではなじみのなかった新しい野菜を作るチャレンジは今も続けられており、一方で、日本古来の伝統野菜を作る取組も各地で進められています。こうした生産者の取組によって、色とりどりの美味しい野菜が毎日私たちに提供されています。

自給率という点では、重量野菜であるだいこんやはくさいの生産量が減少したこともあり、重量ベースの野菜の自給率が減少してきていますが、消費者が求める野菜への生産の転換を進めたことで、農業全体の産出額に占める野菜の割合は昭和40年度の12%から24%へと倍増し、野菜は生産額ベースの自給率を支える重要な品目となっています。野菜の自給率向上に向けて、令和2(2020)年3月に定めた食料・農業・農村基本計画では、需要が拡大する加工・業務用野菜について輸入品から国産品への置き換えを目指すこととしています。

具体的には、加工・業務用に強く求められる供給量と価格の安定に応えるために、南北に長い日本列島の気候差を活用して、国内産の野菜が1年中市場に上るよう複数の産地によるリレー出荷を進めています。また、新技術の導入による機械化一貫体系を導入することで、労働時間の短縮などの低コスト・省力化を図っています。

このように、消費者や実需者のニーズに対応した野菜を安定供給する産地づくりが野菜の自給率の向上につながるものと考えています。

5. おわりに

今回は野菜の自給率について紹介しましたが、いかがだったでしょうか。本記事をきっかけに、自給率と野菜の生産・消費などについて興味を持っていただければ幸いです。
次回は少し視点を変えて、食料安全保障についてお話させていただく予定です。

出典

  • 1.板木利隆『からだにおいしい野菜の便利帳』、2010年、独立行政法人 農畜産業振興機構HP
  • 2.安達巌『縄文~現代まで たべもの伝来史』、1975年、鵜飼保雄・大澤良『品種改良の日本史 作物と日本の歴史物語』、2013年
  • 3.総務省『家計調査』

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大臣官房政策課食料安全保障室

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