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農林水産省

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第7節 需要構造等の変化に対応した生産基盤の強化と流通・加工構造の合理化



我が国では、各地域の気候や土壌等の条件に応じて、様々な農畜産物が生産されています。消費者ニーズや海外市場、加工・業務用等の新たな需要に対応し、国内外の市場を獲得していくためには、各品目の生産基盤の強化とともに、労働安全性の向上や生産資材の低コスト化等も重要です。

本節では、これらに係る取組等の動向について、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響にも触れながら紹介します。

(1)畜産・酪農の生産基盤強化等の競争力強化
ア 畜産物の市場価格の動向

(牛枝肉の価格は令和2(2020)年に一時低下も、令和3(2021)年は近年と同水準で推移)

図表2-7-1 牛枝肉の卸売価格

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畜産物の価格は、令和2(2020)年以降の新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、家庭内需要は増加したものの、業務用需要が減少するなど、大きな影響が生じました。

牛枝肉の卸売価格は、外食需要やインバウンド需要の減退により、令和2(2020)年2月から4月にかけて大幅に低下しましたが、同年5月以降は経済活動の再開や輸出の回復に伴い、回復傾向で推移し、令和3(2021)年以降は近年の平均価格とおおむね同水準で推移しています(図表2-7-1)。

肥育牛の販売価格は、令和2(2020)年に枝肉価格が低下したことに伴い低下しました(図表2-7-2)。また、肉用子牛の取引価格は、枝肉価格や取引頭数の動向等に伴い、令和2(2020)年度から令和3(2021)年度にかけて変動しています(図表2-7-3)。

図表2-7-2 肥育牛の販売価格

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図表2-7-3 肉用子牛の取引価格

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(令和3(2021)年の豚肉・鶏肉の価格は例年並、鶏卵の価格はおおむね例年以上)

豚肉や鶏肉の卸売価格は、家庭内需要の増加により、令和2(2020)年は近年の平均価格を上回って推移しました。一方、令和3(2021)年に入ってからは、近年の平均価格とおおむね同水準で推移しています(図表2-7-4、図表2-7-5)。

鶏卵は、業務用需要が大幅に減少したため、令和2(2020)年の卸売価格は低水準で推移しました。令和3(2021)年は、同年3月以降、鳥インフルエンザの影響で供給量が減少したことにより、例年を上回る水準で推移しましたが、外食等の需要が十分に回復していないことから、同年11月以降は例年を下回る水準となっています(図表2-7-6)。

図表2-7-4 豚肉の卸売価格

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図表2-7-5 鶏肉(もも肉)の卸売価格

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図表2-7-6 鶏卵の卸売価格

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イ 主要畜産物の生産動向等

(繁殖雌牛や肥育牛の飼養頭数、牛肉生産量は生産基盤強化対策等の実施により増加傾向)

図表2-7-7 繁殖雌牛飼養頭数、肉用子牛出生頭数

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繁殖雌牛の飼養頭数は、経営体の規模拡大やキャトルブリーディングステーション(CBS)(*1)、キャトルステーション(CS)(*2)の活用等により、平成28(2016)年以降増加傾向となっており、令和3(2021)年は63万3千頭となりました(図表2-7-7)。このほか、酪農経営における受精卵移植による肉用子牛生産の増加もあり、肉用子牛の出生頭数も増加しています。

このように肉用子牛の生産基盤強化が図られる中、畜産クラスター事業による肥育体制の強化が併せて図られた結果、平成29(2017)年以降、肉用種の肥育牛の飼養頭数が増加し、平成29(2017)年度以降、牛肉生産量は増加傾向となっています(図表2-7-8、図表2-7-9)。令和2(2020)年度は、和牛の生産量が増加したことから、前年度に比べ1.8%増加の33万6千tとなり、34万t(部分肉ベース)の目標をおおむね達成しました。

図表2-7-8 肥育牛の飼養頭数

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図表2-7-9 牛肉生産量

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*1 繁殖経営で多くの時間を費やす、繁殖雌牛の分べん・種付けや子牛の哺育を集約的に行う組織

*2 繁殖経営で生産された子牛の哺育・育成を集約的に行う組織であり、繁殖雌牛の預託を行う場合がある。

(牛肉の輸出額は新たな販路の開拓により増加)

図表2-7-10 牛肉の輸出量と輸出額

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牛肉の輸出は和牛の海外での認知度向上等を背景に年々増加傾向にあり、令和3(2021)年の牛肉の輸出額は、輸出先国での外食需要の回復に加えて、米国等において、EC(*1)販売等の新たな販路を開拓したことから、前年に比べ85.9%増加の537億円となりました(図表2-7-10)。令和12(2030)年までに輸出額を3,600億円とすることを目標としています。

*1 Electronic Commerceの略。電子商取引

(乳用牛の飼養頭数、生乳生産量は増加)

乳用牛の飼養頭数は、性判別精液の活用等による乳用後継牛確保の取組が進み、乳用雌子牛の出生頭数が増加したこと等から、平成30(2018)年以降増加し、令和3(2021)年は135万6千頭となりました(図表2-7-11)。

図表2-7-11 乳用牛の飼養頭数及び乳用子牛の出生頭数

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図表2-7-12 生乳生産量

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令和2(2020)年度の生乳生産量は、都府県では搾乳牛頭数と1頭当たりの乳量の増加により8年ぶりに増加に転じ、前年度に比べ4千t増加の327万5千tとなり、北海道では搾乳牛頭数の増加により前年度に比べ6万7千t増加の415万8千tとなりました。その結果、合計すると前年度に比べ7万1千t増加の743万3千tとなりました(図表2-7-12)。

(コラム)搾乳牛1頭当たりの労働時間は減少傾向

牛1頭当たりの労働時間

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搾乳牛1頭当たりの労働時間は、肥育牛に比べ長い状況となっているものの、作業の機械化で省力化が図られていること等から減少傾向で推移しています。

農林水産省では、労働負担の更なる軽減に向け、搾乳や給餌作業の負担軽減に資する機械装置の導入、預託先の確保や受入頭数の拡大を図るための育成の外部化、コントラクター等による飼料生産の外部化、酪農ヘルパーの取組を支援しています。

(豚肉、鶏肉の生産量は増加、鶏卵の生産量は減少)

図表2-7-13 豚肉・鶏肉の生産量

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図表2-7-14 鶏卵の生産量

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豚肉は、畜産クラスター事業の推進によって生産基盤の強化が図られたこと等により、鶏肉は、消費者の健康志向の高まりや国産志向を背景に価格が堅調に推移していること等から、近年、生産量が増加傾向で推移しています。令和2(2020)年度は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による家庭内需要の増加に伴い、豚肉は、前年度に比べ1.5%増加の91万7千t、鶏肉は、前年度に比べ1.5%増加の165万6千tとなり、共に目標(豚肉:90万t(部分肉ベース)、鶏肉:162万t)を達成しました(図表2-7-13)。

鶏卵は、近年は堅調な価格を背景に生産が拡大傾向で推移していましたが、令和2(2020)年度の生産量は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により外食等での需要が減少し、価格が低水準で推移したことや、鳥インフルエンザの影響により多くの採卵鶏が殺処分されたことから、前年度に比べ2.0%減少の259万6千tとなりました(図表2-7-14)。

(畜産物の国内外の需要に応じた生産のため、生産基盤強化等を推進)

農林水産省は、国内外の需要に応じた生産を進めるため、CBS、CSの活用による肉用繁殖牛の増頭のほか、ICT(*1)等の新技術を活用した発情発見装置や分べん監視装置等の機械装置の導入等による生産基盤強化、衛生管理の改善、家畜改良や飼養管理技術の向上等を推進しています。これらの取組を通じ、令和12(2030)年度までに牛肉、豚肉、鶏肉、生乳の生産量をそれぞれ、40万t(部分肉ベース)、92万t(部分肉ベース)、170万t、780万tとすることを目標としています。

*1 用語の解説3(2)を参照

(飼料価格は令和3(2021)年に入り上昇傾向)

畜産農家の経営費に占める飼料費の割合は、肥育牛で3割、肥育豚で6割となる中で、とうもろこし等の濃厚飼料については大部分を輸入に依存しており、穀物等の国際相場や為替レート等の影響を受けやすい状況にあります。このような中、飼料価格は令和3(2021)年以降、輸入される原料価格の高騰等により上昇傾向で推移しています(図表2-7-15)。

図表2-7-15 飼料の価格指数

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(国産飼料作物、エコフィードの生産・利用を推進)

図表2-7-16 飼料作物の作付面積と収穫量

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飼料作物の収穫量は、近年おおむね横ばいで推移しており、令和2(2020)年産のTDN(*1)ベースの収穫量は、378万TDNtの目標に対し、牧草や青刈りとうもろこしの収穫量の減少等により、前年産に比べ2.4%減少の331万7千TDNtとなりました(図表2-7-16)。令和3(2021)年産の飼料作物の作付面積については、飼料用米が増加したことから、前年産に比べ4万5,300ha(4.7%)増加の100万1千haとなりました。

粗飼料については約8割を国産で供給していますが、これを全て国産にするため、農林水産省は、水田における青刈りとうもろこし等の生産拡大等を推進しており、飼料作物の生産量を令和12(2030)年度までに519万TDNtとすることを目標としています。

また、エコフィード(*2)(食品残さ等を利用した飼料)の製造数量は、一部原材料の使用の減少により減少傾向で推移しており、令和2(2020)年度は108万TDNtとなっています。これは濃厚飼料全体の約5%に当たります(図表2-7-17)。

図表2-7-17 エコフィードの製造数量と濃厚飼料に占める割合

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農林水産省では、このような過度な輸入依存から脱却し、国産飼料生産基盤に立脚した畜産物生産を推進するため、国産の飼料用米や飼料用とうもろこし等の国産飼料の生産と利用拡大や、コントラクター等の飼料生産外部支援組織の育成、牧草地の整備とともに、地域の未利用資源を新たに飼料として活用するためのエコフィードの生産と利用を推進しています。

*1 Total Digestible Nutrientsの略で、家畜が消化できる養分の総量

*2 用語の解説3(1)を参照

(「持続的な畜産物生産の在り方検討会の中間とりまとめ」を公表)

近年、世界的に農林水産分野における環境負荷軽減の取組が加速する中で、我が国の温室効果ガス(*1)排出量の約1%を占める酪農・畜産でも排出削減の取組が求められていることを背景に、農林水産省は、令和3(2021)年1月から持続的な畜産物生産の在り方検討会を開催し、同年6月に中間取りまとめを公表しました。

中間取りまとめでは、家畜生産に係る環境負荷軽減等の展開や、資源循環の拡大、国産飼料の生産・利用の拡大、有機畜産の振興、アニマルウェルフェアに配慮した飼養管理の普及、畜産GAP(*2)認証の推進、消費者の理解醸成等に取り組んでいくこととしています。

*1 用語の解説3(1)を参照

*2 用語の解説3(2)を参照

(アニマルウェルフェアの取組を普及・推進)

農林水産省では、アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理を広く普及・定着させるため、平成29(2017)年及び令和2(2020)年に「アニマルウェルフェアに配慮した家畜の飼養管理の基本的な考え方について」を発出するとともに、畜種ごとの飼養管理方法については、公益社団法人畜産技術協会(ちくさんぎじゅつきょうかい)による「アニマルウェルフェアの考え方に対応した家畜の飼養管理指針」の作成を支援するなどの取組を行っています。また、令和4(2022)年1月には、アニマルウェルフェアに関する最新の科学的知見や国際的動向を考慮した施策を推進するとともに、アニマルウェルフェアに対する相互理解を深めるため、生産、流通、食品加工、外食、動物福祉の関係者や学識経験者等を構成員とした意見交換会を開催しました。今後も、アニマルウェルフェアに配慮した生産体制の確立を加速させるため、現行の飼養管理指針を見直し、OIEコード(*1)に基づき農林水産省が畜種ごとの飼養管理方法についての指針を新たに策定・発出するなど、更なる取組の普及・推進を図ることとしています。

*1 OIE(国際獣疫事務局)の陸生動物衛生規約

(畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律が公布)

畜舎堆肥舎の建築に関し建築基準法の特例を定めることを内容とする「畜舎等の建築等及び利用の特例に関する法律」が令和3(2021)年5月に公布されました。この法律により一定の利用基準を遵守すれば、緩和された構造等の技術基準で畜舎を建設できるため、農業者や建築士の創意工夫により建築費を抑え、規模拡大や省力化機械の導入が一層進むものと期待されます。

(2)新たな需要に応える園芸作物等の生産体制の強化
ア 野菜

(野菜の国内生産量はおおむね横ばいで推移)

図表2-7-18 野菜の国内生産量

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野菜の国内生産量は、近年、天候の影響を受けて増減しているものの、おおむね横ばいで推移しており、令和2(2020)年度の国内生産量は、前年度に比べ1.0%減少の1,147万tとなりました(図表2-7-18)。

(加工・業務用野菜の生産体制の強化を推進)

近年、野菜需要の6割は加工・業務用向けが占めています。加工・業務用野菜は、冷凍食品会社等の実需者から国産需要が高いものの、国産が出回らない時期がある品目等を中心に輸入が約3割を占めています。

指定野菜(ばれいしょを除く。)の加工・業務用野菜の出荷量は、中食(*1)市場の拡大とともに家庭内消費用のカット野菜等のニーズが拡大していることから、近年増加傾向となっています。令和2(2020)年産は107万tの目標としていたところ、天候不順や新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響に伴う外食産業等の需要減少等により、前年産に比べ4.0%減少の101万6千tとなっています(図表2-7-19)。

農林水産省では、加工・業務用野菜等の生産体制を一層強化し、輸入野菜の国産切替えを進めるため、水田を活用した新たな園芸産地における機械化一貫体系の導入のほか、新たな生産・流通体系の構築や作柄安定技術の導入等を支援しており、令和12(2030)年度までに加工・業務用野菜の出荷量を平成30(2018)年度から約5割増の145万tとすることを目標としています。

図表2-7-19 指定野菜の加工・業務用向け出荷量

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*1 用語の解説3(1)を参照

(コラム)カット野菜等の購入金額は増加

カット野菜、冷凍野菜、野菜惣菜の購入動向(令和2(2020)年と過去3か年平均の差)

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による外出自粛に伴い、外食への支出が減少した一方、家庭内消費が増加したため、令和2(2020)年は、家庭におけるカット野菜、冷凍野菜、野菜惣菜の購入金額が増加しました。

独立行政法人農畜産業振興機構(のうちくさんぎょうしんこうきこう)の調査によると、カット野菜の購入金額は同年1月以降、過去3か年の平均購入価格を上回って推移するとともに、同年3月以降は、冷凍野菜や野菜惣菜の購入金額も過去3か年平均額よりも増加しています。

イ 果実

(果実の国内産出額は価格の上昇により前年に比べて増加、輸出額は増加傾向)

図表2-7-20 果実の国内産出額

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図表2-7-21 果実の輸出額

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果実の国内産出額は、消費者ニーズに合った高品質な品目・品種への転換等によって、販売単価が上昇傾向となり、平成24(2012)年から増加傾向にあります(図表2-7-20)。品目別には、皮ごと食べられるシャインマスカット等の優良品種の生産拡大により、特にぶどうの産出額が増加傾向にあります。

令和2(2020)年は、天候不順により、日本なし、ぶどう、ももの生産量が減少し、価格が上昇したため、前年に比べ4.1%増加の8,741億円となりました。

また、我が国の高品質な果実がアジアを始めとする諸外国・地域で評価され、輸出額はぶどう、ももを中心に増加傾向にあります。令和3(2021)年は、台湾におけるりんごの贈答用や家庭内需要が増加したこと等から、前年から74億円増加の263億円となりました(図表2-7-21)。

(果実の国内生産量はおおむね前年度並)

果実の国内生産量については、近年、栽培面積が減少していることから減少傾向にあります。令和2(2020)年度は、りんごは生育が良好であったものの、日本なしが開花後の低温により着果数が減少したことや、夏季の天候不順等から、287万tの目標に対し、おおむね前年度並の268万5千tとなりました(図表2-7-22)。

農林水産省は、生産基盤を強化するため、省力樹形の導入や、消費者ニーズの多様化・高度化に対応した新技術・新品種の普及、輸出拡大に対応できる生産量の増大や環境整備等の取組を進めており、令和12(2030)年度の果実の国内生産量を平成30(2018)年度から約1割増の308万tとすることを目標としています。

(コラム)省力樹形により作業を省力化

果樹の省力樹形については、樹体の生長を抑制する台木の利用や整枝技術により樹体を小型化し、管理しやすい樹形とするため、作業動線が単純で効率的な樹列への定植により作業が大幅に省力化されることから、労働生産性の抜本的な向上につながります。また、均一的な日当たりとなり、品質がそろいやすく、密植することで改植・新植後短期間で高収益が可能となります。

省力樹形の例として、側枝をV字に整枝して効率的な作業を可能とするV字ジョイント樹形があります。これにより、慣行栽培に比べ作業時間を整枝・剪定(せんてい)作業で約9割、総労働時間で約4割削減することが可能となります。

ウ 花き

(花きの輸出拡大に向けた取組が進展)

図表2-7-23 花きの輸出額

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日本産の花きは、国際的にも高い評価を得ており、近年、アジアや欧州、米国向けを中心に輸出額が増加傾向にあります。令和3(2021)年の輸出額は85億円で、中国向けの植木の輸出が減少したことから前年より30億円減少しましたが、切り花については、これまでの現地でのプロモーション等の取組により、10年前と比べ約14倍に増加しています(図表2-7-23)。引き続き、輸出産地の育成、新品種や優良品種の普及、暑熱対策等による周年生産、国際園芸博覧会への政府出展等を活用した海外需要の創出等を推進していくこととしています。

(花きの安定供給や国内シェア回復に向け、生産性向上等の取組を推進)

花きの産出額は作付面積の減少等により減少傾向で推移しており、令和元(2019)年産の産出額は、目標を3,745億円としていたところ、前年産から2.2%(79億円)減少の3,484億円となりました(図表2-7-24)。農林水産省は、国内需要への安定供給や国内シェアの回復に向けて、スマート農業技術の導入による生産性の向上、流通の合理化等の取組を進めており、令和12(2030)年(令和10(2028)年産)の産出額を平成29(2017)年から約2割増の4,500億円とすることを目標としています。

図表2-7-24 花きの産出額と作付面積

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花き振興コーナー

花き振興コーナー
URL:https://www.maff.go.jp/j/seisan/kaki/flower/

エ 茶、甘味資源作物等の地域特産物
(ア)茶

(茶の輸出は海外の日本食ブーム等により増加、特に有機栽培茶が伸び)

茶の輸出は、海外の日本食ブームや健康志向の高まりにより近年増加傾向にあります。令和3(2021)年の茶の輸出額は目標の195億円に対し、前年から25.9%増の204億円となっており、10年前と比べると約4倍に増加しています(図表2-7-25)。茶の輸出増加に伴い、抹茶の原料となるてん茶の生産量も増加傾向で推移しています。

また、有機栽培による茶は海外でのニーズも高く、EUや米国等との有機同等性(*1)の仕組みを利用した輸出は増加傾向にあり、令和2(2020)年は過去最高の1,023tとなりました(図表2-7-26)。

農林水産省は、輸出先国の残留農薬基準への適合を進めるとともに、国内においては、病害虫防除マニュアルの作成や各地での防除体系の確立を推進しており、令和7(2025)年の輸出額を平成30(2018)年から約2倍の312億円とすることを目標としています。

図表2-7-25 緑茶の輸出量と輸出額及びてん茶の生産量

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*1 他国・地域の有機認証を自国・地域の有機認証と同等のものとして取り扱うこと

(茶の栽培面積は前年産に比べ減少)

令和3(2021)年産の茶の栽培面積は、高齢化による労働力不足に伴う廃園等があったことから、前年産に比べて1,100ha減少の3万8千haとなりました。また、生産量は主産県である静岡県において、天候に恵まれたことに加え、ドリンク原料用の生産が増加したこと等から、前年産に比べて11.9%増加し、7万8千tとなりました(図表2-7-27)。

このような中、農林水産省は茶業界と一体となり、令和3(2021)年3月から「日本茶と暮らそうプロジェクト」を開始し、様々な暮らしの中で茶を楽しみながら、消費拡大につなげることを目指しています。

図表2-7-27 茶の栽培面積と荒茶生産量

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日本茶と暮らそうプロジェクト

日本茶と暮らそうプロジェクト
URL:https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/cha/tea_life.html

(イ)薬用作物

(薬用作物の生産拡大を推進)

図表2-7-28 薬用作物の栽培面積と1戸当たり栽培面積

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漢方製剤等の原料となる薬用作物については、国内需要の約8割を中国産が占めていますが、中国産の価格高騰等により、製薬会社において国内産地の育成のニーズが高まっています。しかしながら、薬用作物は栽培技術が未確立な品目が多いため、栽培面積は横ばいとなっており、令和元(2019)年は目標を573haとしていたところ、前年から8.2%減少の523haとなっています(図表2-7-28)。

農林水産省では薬用作物の国内ニーズ等を踏まえ、メーカーとの契約に向けた事前相談やマッチング機会の提供とともに、安定生産に資する栽培技術確立等のための実証や栽培マニュアルの作成等の支援に取り組んでいます。これらの取組を通じて令和6(2024)年の薬用作物の栽培面積を平成29(2017)年に比べ約1割増の630haとすることを目標としています。

(ウ)甘味資源作物

(てんさい及びさとうきびの収穫量は増加)

てんさいの令和3(2021)年産の作付面積は、前年産に比べ1.6%増加の5万8千haとなりました(図表2-7-29)。収穫量は、前年産に比べ3.8%増加の406万1千tとなりました。糖度は前年産に比べ0.2ポイント低下し16.2度となりました。

さとうきびは、春作業が順調に進み、春植え、株出面積が増加したことから、令和2(2020)年産の収穫面積は前年産に比べ1.8%増加し2万3千haとなりました(図表2-7-30)。収穫量も前年産に比べ13.8%増加し133万6千tとなりました。糖度は前年産に比べ0.1ポイント低下し14.3 度となりました。

また、令和3(2021)年産の収穫面積は、新植面積、株出面積が共に増加したため、前年産に比べ4.7%増加の2万4千haを見込んでいます。さらに、台風被害等の大きな自然災害もなく、おおむね順調な生育となったため、収穫量は前年産に比べ0.9%増加の134万8千tを見込んでいます。

図表2-7-29 てんさいの作付面積、収穫量、糖度

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図表2-7-30 さとうきびの収穫面積、収穫量、糖度

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(てんさい、さとうきび栽培の省力化の推進)

てんさいは、労働時間縮減に向け、直播(ちょくはん)栽培や作業の共同化の取組が進展しています。農林水産省では、省力機械の導入や基幹作業の外部化の推進とともに、盛土による風害軽減対策の普及を進めています。

さとうきびは、規模拡大は進んでいますが、人手不足等により適期に適切な作業ができないことが多いため単収は低迷しています。農林水産省では、機械収穫や株出栽培(*1)に適した新品種「はるのおうぎ」の開発・普及や通年雇用による作業受託組織の強化等地域の生産体制を強化する取組を行っています。

*1 さとうきび収穫後に萌芽する茎を肥培管理し、1年後のさとうきび収穫時期に再度収穫する栽培方法

(砂糖の需要拡大に向け「ありが糖運動」を展開)

国内の砂糖消費量は、消費者の低甘味嗜好(しこう)や、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による外出自粛等に伴う外食及びインバウンド需要の減少の影響もあり、減少傾向で推移しています(図表2-7-31)。農林水産省では、輸入加糖調製品から国産の砂糖への切替えを促すための商品開発等への支援を行うとともに、砂糖関連業界等による取組と連携しながら、砂糖の需要、消費の拡大を図る「ありが糖運動」を展開しており、公式WebサイトやSNSも活用しながら、情報発信をしています。

(エ)いも類

(かんしょの輸出額は13%増加、収穫量は減少)

図表2-7-32 かんしょの輸出量と輸出額

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かんしょの輸出については、甘みが強く粘質性がある特性や、焼き芋による食べ方が注目され、香港、タイ、シンガポール等のアジア諸国・地域向けを中心に好調で、令和3(2021)年の輸出量と輸出額はそれぞれ5,603t(対前年6.4%増)、23.3億円(対前年13.1%増)となりました(図表2-7-32)。

かんしょについては、令和2(2020)年度以降、宮崎県、鹿児島県及び沖縄県のほか22都道県で、つるが枯れ、いもが腐る「サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)」による被害が確認されました。 このため、農林水産省は、関係都道県と連携し、健全種苗の生産・流通・使用の徹底や、圃場(ほじょう)における本病の早期発見・早期防除の徹底等のまん延防止に向けた取組を指導しています。

令和3(2021)年産のかんしょは高齢化による労力不足に伴う作付中止等があったため、作付面積が前年産に比べ2.1%減少したことや、サツマイモ基腐病の影響により鹿児島県の単収が6.1%減少したこと等から、収穫量は前年産に比べ2.3%減少の67万2千tとなりました(図表2-7-33)。

基腐病に感染したかんしょ

基腐病に感染したかんしょ

資料:農研機構

図表2-7-33 かんしょの作付面積と収穫量

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(ばれいしょの収穫量は減少)

図表2-7-34 ばれいしょの作付面積と収穫量

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令和2(2020)年産のばれいしょの作付面積は、主に北海道において小豆やいんげんに転換した面積が多かったことから、前年産に比べ3.4%減少の7万2千haとなりました。収穫量は6月後半の低温、日照不足等の影響により、着いも数が少なく、単収が4.7%減少したことから、前年産に比べ8.1%減少の220万5千tとなりました(図表2-7-34)。

令和3(2021)年産春植えばれいしょは生産者の高齢化や労力不足により規模縮小、作付中止があったため、前年産に比べ作付面積は1.6%減少し6万9千haとなり、収穫量は1.3%減少の213万9千tとなりました(*1)。国産ばれいしょの生産量が減少傾向で推移する中で、ポテトチップやサラダ用等の加工用ばれいしょについては、メーカーからの国産原料の供給要望が強いことから、増産に向け、省力機械化体系導入の取組や、収穫時の機上選別を倉庫前集中選別に移行する取組を推進しています。

*1 農林水産省「令和3年産春植えばれいしょの作付面積、収穫量及び出荷量」(令和4(2022)年2月公表(概数値))

(3)米政策改革の着実な推進

(米の消費拡大に向けた取組と需要に応じた生産・販売を推進)

米(*1)の1人当たりの年間消費量は、食生活の変化等により、昭和37(1962)年度の118.3kgをピークとして減少傾向が続いています。令和2(2020)年度は、52.5kgの維持を目標としていましたが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、令和2(2020)年2~3月にかけて学校の休校要請や外出自粛等による精米の前倒し購入があった一方、年度をまたいだ4月以降、その反動減が起こったことに加え、中食・外食向けを中心に業務用の需要が大幅に減少したことから、全体としては前年度に比べ2.5kg減少の50.7kgとなりました(図表2-7-35)。

消費拡大のため、農林水産省では、学校給食等に使用する米の一部に対し政府備蓄米を無償で交付するとともに、Webサイト「やっぱりごはんでしょ!」において、企業等の消費拡大につながる取組や、「米と健康」に着目した情報の発信を行うなどの取組を行っています。令和3(2021)年4月には、特設ページ「ご炊(た)こうチャレンジ!いただきMAFF!」を開設し、ごはんを炊く楽しさを伝える動画を配信し、米の消費を盛り上げる取組を行っています。主食用米の1人当たり消費量については、平成30(2018)年度から毎年一定程度減少することを見込みつつ、これらの取組を通じ、令和12(2030)年度には50.0kgを維持することを目標としています。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大以前においても、主食用米の需要量が年間10万t程度減少している中、各産地においては消費者ニーズにきめ細かく対応した米生産を行うとともに、需要のある麦・大豆や野菜、果樹等を生産する産地を形成していくことが必要です。このため、農林水産省では、産地・生産者が中心となって需要に応じた生産・販売を行う米政策の着実な推進に向け、産地・生産者と実需者が結び付いた事前契約や複数年契約による安定取引を推進するとともに、水田活用の直接支払交付金や水田リノベーション事業による作付転換への支援等のほか、米の都道府県別の販売進捗、在庫・価格等の情報提供を実施しています。

図表2-7-35 米の1人当たりの年間消費量

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米の消費拡大情報サイト「やっぱりごはんでしょ!」

米の消費拡大情報サイト「やっぱりごはんでしょ!」
URL:https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/gohan.html

*1 主食用米のほか、菓子用・米粉用の米

(令和3(2021)年産米において過去最大規模の6万3千haの作付転換が実現)

令和3(2021)年産米については、令和2(2020)年産米において需要減少に見合った作付転換が十分行われず、かつ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による業務用需要の減少等により、民間の在庫水準が高い状態となったことを受け、過去最大規模の作付転換が必要となりました。

このため、農林水産省では、令和3(2021)年産米の作付転換に向けた支援として、水田リノベーション事業や麦・大豆収益性・生産性向上プロジェクトを措置するとともに、水田活用の直接支払交付金において、都道府県が転換拡大に取り組む農業者を独自に支援する場合に国が追加的に支援する措置の創設等を行いました。さらに、このような関連施策や需給の動向について、理解を促進するため、全国会議や各産地での説明会・意見交換会等を開催し、生産者、農業法人、地方公共団体、集出荷団体、流通・販売事業者等全ての関係者が一丸となって需要に応じた生産・販売を推進しました。

この結果、米の需給の安定に必要な規模となる6万3千haの作付転換が実現され、作付面積は130万3千haとなりました(図表2-7-36)。他方、転換作物の内訳を見ると、飼料用米等の作付面積が大きく増加しており、令和4(2022)年産以降、麦・大豆や野菜、子実用とうもろこし等の定着性や収益性の高い作物への転換が必要となっています。

図表2-7-36 主食用米等の作付面積

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(需給緩和を踏まえた対応)

令和3(2021)年産の主食用米の生産量は、日照不足等の影響が見られる地域がある一方、北海道及び東北においては全もみ数が平年以上に確保され、登熟も順調に推移したことから、全国で作況指数(*1)が101となり、前年産に比べ3.0%減少の701万tとなりました(図表2-7-37)。

図表2-7-37 主食用米の生産量、需要量、民間流通における6月末在庫量

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令和3(2021)年産米の価格動向を見ると、令和4(2022)年2月までの相対取引価格は年産平均で60kg当たり1万2,944円と前年産に比べ10.9%低下となりました(図表2-7-38)。

このような状況の中で、農林水産省は、当面の需給の安定に向け令和2(2020)年産米のうち、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による需要減に相当する15万tについて特別枠を設けるなど、長期計画的な販売に伴う保管経費等への支援、中食・外食等への販売促進、子供食堂、子供宅食等への米の提供の支援措置を講じました。

図表2-7-38 米の相対取引価格

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米の需給と価格の安定を図るためには、令和4(2022)年産の主食用米について、21万tの削減(平年単収ベースで3万9千ha)が必要となっています。中長期的にどのような産地を目指すのかを各産地の関係者間で共有し、麦・大豆や野菜、子実用とうもろこし等の定着性や収益性の高い作物への作付転換を図ることが重要です。このため、令和4(2022)年産に向けては、水田リノベーション事業や麦・大豆収益性・生産性向上プロジェクトを拡充して措置するとともに、全国会議や各産地での説明会、意見交換を通じて、需要に応じた生産・販売を推進しています。

*1 用語の解説3(1)を参照

(高収益作物の産地を256産地創設)

水田農業の高収益化の推進

水田農業の高収益化の推進
URL:https://www.maff.go.jp/j/seisaku_tokatu/suiden_kosyueki.html

野菜や果樹等の高収益作物は、必要な労働時間は水稲よりも多くなるものの、面積当たりの農業所得(*1)は高くなっており、高い収益が期待されます。このため、農林水産省は、水田における野菜や果樹等の高収益作物等への転換を積極的に推進し、令和7(2025)年度までに水田農業における高収益作物の産地を500創設することとしており、令和3(2021)年12月末時点では256産地となっています。

*1 用語の解説2(4)を参照

(コメ・コメ加工品の輸出を拡大)

国内の主食用米の需要が毎年減少していく一方、海外における食品市場は年々拡大しています。このような中、官民一体となって海外におけるプロモーション等の取組による新たな市場の開拓を通じ、コメ・コメ加工品の輸出拡大を図っていくこととしています。

政府は、コメ・パックご飯・米粉及び米粉製品の輸出額目標を、令和7(2025)年までに125億円とし、輸出ターゲット国・地域として香港、シンガポール、米国、中国を設定しています。

輸出ターゲット国・地域を中心として戦略的に輸出に取り組む事業者への支援や、今後輸出拡大の可能性が期待できる中東や欧州等の新興市場においてオールジャパンでのプロモーションを実施した結果、令和3(2021)年の商業用の米の輸出額は、12%増加の59億3千万円となりました(図表2-7-39)。また、国・地域別では、香港、シンガポール等への輸出が増えており、今後も輸出ターゲット国・地域を中心に、輸出拡大や大ロットでの輸出用米の生産に取り組む産地の育成を進めていきます。

(米粉用米の生産量は増加、更なる需要拡大に向けた取組を推進)

図表2-7-40 米粉用米の生産量と需要量

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米粉用米の需要量は、近年増加傾向で推移していますが、令和2(2020)年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、家庭内需要が増加する一方、業務用需要が減少したことから前年度と同じ3万6千tとなりました(図表2-7-40)。

令和2(2020)年度の米粉用米の生産量は、3万8千tを目標としていた中で、近年の需要量の増加傾向に対応し、前年度に比べ作付面積が20%増加し、生産量は5千t増加の3万3千tとなりました。

農林水産省は、米粉用米の需要拡大を図るとともに、海外のノングルテン市場に向けて輸出を拡大するため、令和2(2020)年10月に制定したノングルテン米粉の製造工程管理JASの認証を令和3(2021)年6月から開始しました。このような取組を通じ、令和12(2030)年度までに平成30(2018)年度の生産量から4倍以上に増加させ、13万tに拡大することを目標としています。

(飼料用米の安定的な供給への取組)

令和2(2020)年産の飼料用米の作付面積は、一部産地で飼料用米から新市場開拓用米等へ作付転換されたことから、前年産に比べ1,600ha減少し7万1千haとなりました。また、生産量は、47万2千tを目標としていましたが、作付面積の減少により、前年産に比べ2.3%減少し38万1千tとなりました(図表2-7-41)。一方で、令和3(2021)年産の飼料用米の作付面積は、主食用米からの作付転換が実施された結果、前年産に比べ4万5千ha、63%増加し11万6千haとなりました。

農林水産省は、国産飼料生産に立脚した安定的な畜産経営を行う環境を整備するため、飼料用米の生産・利用拡大や多収品種の導入等の取組を推進し、単収の大幅増加等、生産の効率化を進めています。このような取組を通じて飼料用米の生産量を令和12(2030)年度までに平成30(2018)年度から64%増加させ、70万tに拡大することを目標としています。

(担い手の米の生産コスト削減に向けて、生産資材費等の低減を推進)

稲作経営の農業所得を向上させるためには、生産コストの削減も重要であることから、米の生産については、農地の集積・集約化(*1)、多収品種の導入やスマート農業技術の普及に加え、生産資材費の低減等を推進しています。

令和2(2020)年産の農機具費、肥料費及び農業薬剤費の生産資材費と労働費の合計については、為替の影響を受け、肥料と農薬の海外からの原料調達コストが上昇したことに加え、労働費が上昇したため、個別経営(認定農業者(*2)がいる経営体のうち作付面積15.0ha以上の経営体)で5,778円/60kg、組織法人経営(稲作主体の組織法人経営体)で5,776円/60kgの目標に対し、それぞれ6,463円/60kg、6,672円/60kgとなりました(図表2-7-42)。

農林水産省では、農機具費等の生産資材費を下げるため、農業資材事業の事業再編・事業参入、農業資材の調達コストの低減、農業者における低価格な生産資材の選択に資する情報提供等の取組を推進しています。これらに加え、輸出等の新たな需要に対応するため、令和4(2022)年度からは、大幅なコスト低減を目指す産地に対して、生産コストの現状分析、課題抽出、低減対策の検討や実証、普及等の取組を総合的に支援することとしています。このような取組を通じて、農機具費、肥料費及び農業薬剤費の生産資材費と労働費の合計について、個別経営、組織法人経営で令和6(2024)年度までに5,470円/60kgとすることを目標(*3)としています。

図表2-7-42 米の生産資材費と労働費

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*1、2 用語の解説3(1)を参照

*3 「日本再興戦略」(平成25(2013)年6月閣議決定)で、令和5(2023)年までに平成23(2011)年産の全国平均(16,001円/60kg)から4割削減する目標を掲げている。そのうち、生産資材費(農機具費、肥料費、農業薬剤費)と労働費の合計で設定した目標

(4)麦・大豆の需要に応じた生産の更なる拡大

(小麦の生産量は前年産に比べ16%増加の110万t)

令和3(2021)年産の小麦の作付面積は、前年産に比べ3%増加し、22万haとなりました。また、小麦の生産量は、天候に恵まれ生育が良好に推移したこと等から、前年産に比べ16%増加し、109万7千tとなり、令和12(2030)年度における生産努力目標(*1)の108万tと同水準となりました(図表2-7-43)。大麦・はだか麦については、前年産に比べ、作付面積が微減し6万3千haとなった一方、生産量は6%増加し23万5千tとなり、令和12(2030)年度における生産努力目標の23万tを上回る水準に達しました。

図表2-7-43 小麦の作付面積、収穫量、単収

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*1 農林水産省「食料・農業・農村基本計画」(令和2(2020)年3月閣議決定)における生産努力目標

(需要に応じた国産切替えの流れを一層推進)

図表2-7-44 小麦作付面積に占めるパン・中華麺用小麦の作付比率

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近年、麦の消費量に占める国内生産量の割合は、小麦が11~16%、大麦・はだか麦で8~12%となっており、今後、国産麦の割合を伸ばす余地があります。また、耐病性や加工適性に優れた新品種の導入・普及が進み、実需者が求める品質に見合った麦の生産が実現しつつあります。この結果、パン・中華麺用小麦の作付比率が増加しており、直近10年間では、パン・中華麺用小麦の国産使用量が堅調に伸びています(図表2-7-44)。

需要を捉えた生産拡大により国産シェアを拡大するため、農林水産省は、生産性の高い産地の育成や単収・品質の向上に向けた栽培技術や機械の導入等による産地の生産体制の強化・生産の効率化を進めるとともに、国産の供給力を安定させるため、民間保管施設の整備や一時保管による安定供給体制の構築等を推進しています。

(大豆の生産量は前年産に比べ13%増加の25万t)

令和3(2021)年産の大豆の作付面積は、水稲や北海道で小豆等からの転換等があったことから前年産に比べ3%増加し、14万6千haとなりました。大豆の生産量は、一部地域を除き、生育期間がおおむね天候に恵まれ生育が良好に推移したこと等から、23万8千tの目標に対し、前年産に比べ13%増加の24万7千tとなりました(図表2-7-45)。

図表2-7-45 大豆の作付面積、収穫量、単収

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(国産大豆の需要量は増加傾向)

図表2-7-46 食用大豆の需要動向

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近年、健康志向の高まり等により、食用大豆の需要量は増加傾向で推移しています。令和2(2020)年度の需要量は、前年度に比べ2.2%増加し105万3千tとなりました(図表2-7-46)。国産大豆は、実需者から味の良さ等の品質面が評価され、ほぼ全量が豆腐、納豆、煮豆等の食品向けに用いられており、令和2(2020)年度の食品向けに用いられた国産大豆の量は、前年度に比べ1千t増加し21万1千tとなりました。

食用大豆の需要見込みについて、令和3(2021)年に農林水産省が実施した実需者へのアンケート調査等では、豆腐・豆乳、納豆等の各実需者が、令和8(2026)年度の大豆の使用量を令和2(2020)年度より14%増やす見込みであり、特に国産大豆の使用量は26%増やす見込みです(図表2-7-47)。国産大豆を増やす理由については、「付加価値を付与できる」、「消費者ニーズに応えられる」等と回答しており、今後、国産大豆の需要が一層高まることが期待されます(*1)。

農林水産省では、大豆の需要を捉えた生産拡大により国産シェアを拡大するため、作付けの団地化やスマート農業によるコスト低減、排水対策の更なる強化、耐病性・加工適性等に優れた新品種の導入等を通じ、生産量の向上を推進しています。

これらの取組を通じ、大豆の生産量を令和12(2030)年度までに平成30(2018)年度から6割増加させ、34万tに拡大することを目標としています。

図表2-7-47 食用大豆の需要見込み(令和2(2020)年度の実績に対する見込み)と国産大豆使用の意向

*1 トピックス6を参照

(事例)麦・大豆収益性・生産性向上プロジェクトを活用した取組(宮城県)

宮城県大崎市
汎用コンバイン

汎用コンバイン

資料:農事組合法人なかしだファーム

関係者との意見交換

関係者との意見交換

資料:農事組合法人なかしだファーム

宮城県大崎市(おおさきし)で平成28(2016)年から米、麦、大豆の生産を行っている農事組合法人なかしだファームでは、令和3(2021)年度に「麦・大豆収益性・生産性向上プロジェクト」を活用し、作付けの団地化や農業機械の導入等を推進することで、大豆の生産性向上に取り組みました。

同法人は、団地化の取組を集落ごとから地域全体に発展させ、83haの圃場で水稲・小麦・大豆の2年3作を基本とするブロックローテーションを実施するとともに、汎用コンバインを導入し、大豆生産の効率化を進めてきました。

また、安定した収量を確保するため、有機資材を積極的に活用した土づくりや湿害軽減のための弾丸暗渠(あんきょ)の施工等を積極的に推進してきました。

その結果、令和3(2021)年産大豆の作付面積・単収は、前年と比較して、共に3割程度増加し、27ha、262kg/10aとなりました。

同法人では、多数の実需者との意見交換を定期的に実施することで、作付けする品種を決定するなど、需要に応じた生産を徹底しており、今後も堅調な国産大豆の需要に応えるべく、大豆の生産拡大に積極的に取り組んでいくこととしています。

(5)GAP(農業生産工程管理)の推進と効果的な農作業安全対策の展開
ア GAP(農業生産工程管理)の推進

(GAP認証を取得する経営体が増加)

GAPは、食品安全、環境保全、労働安全等の観点から、農業者が自らの生産工程をチェックし、改善する取組です。GAPを実践することで、持続可能性の確保、競争力の強化、食品の安全性向上、農業経営の改善や効率化、消費者や実需者の信頼の確保等に役立つことが期待されています。

GAPの取組が正しく実施されていることを第三者機関が審査し、証明する仕組みをGAP認証といい、我が国では主にGLOBALG.A.P.(*1)、ASIAGAP(*2)、JGAP(*3)の3種類が普及しています。GAP認証等が2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会(*4)(以下「東京2020大会」という。)における食材調達基準となったことを契機として、農林水産省では、指導者の育成等を通じ、GAP認証の取得拡大を進めてきました。

近年、農産物のGAP認証取得経営体数は増加しています。令和2(2020)年度末のGAP認証取得経営体数は、前年度から686経営体増加し7,857経営体となり、平成29(2017)年度の約1.7倍となりました(図表2-7-48)。

国際水準のGAP認証であるGLOBALG.A.P.、ASIAGAP、JGAPの認証取得経営体と、都道府県が設置するGAP指導員の指導を受けて国際水準GAPを実施する経営体を合わせると、国内で国際水準GAPを実施する経営体数は、令和2(2020)年度において目標値の2万2千経営体に対し、1万7,388経営体となっています。

SDGs(*5)に対する関心が国内外で高まる中、食品安全、環境保全、労働安全に加えて、国際的に求められる人権保護への配慮や農場経営管理の実践を含めた国際水準GAPの取組を生産現場に拡大していくことが重要であることから、農林水産省は、令和12(2030)年までにほぼ全ての産地で国際水準GAPが実施されることを目指し、同年度までに国際水準GAPを実施する経営体数を24万経営体とすることとしています。目標達成に向け、指導員による指導活動や農業教育機関における認証取得の支援に取り組むほか、令和4(2022)年3月に、我が国における国際水準GAPの推進方策を策定しました。

また、消費者向けのGAP情報発信サイト「GAP-info」において、GAPの紹介動画の配信とともに、GAPの価値を共有し、GAP認証農産物を取り扱う意向を有している事業者である「GAPパートナー」の紹介等に取り組んでいます。

図表2-7-48 GAP認証取得経営体数及び国際水準GAPを実施する経営体数(農産物)

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*1~3、5 用語の解説3(2)を参照

*4 大会は令和3(2021)年に開催

イ 農作業安全対策の展開

(農業機械作業中の死亡事故が7割)

農作業中の事故による死亡者数は、近年、減少傾向にあります。令和2(2020)年は前年に比べ11人減少し、当該年の目標の253人に対し、270人となりました(図表2-7-49)。また、就業者10万人当たりの死亡者数は10.8人と増加傾向となっており、全産業1.2人、建設業5.2人に比べて依然として高い状況となっています。

年齢別に見ると、65歳以上が229人(84.8%)、80歳以上が95人(35.2%)と、高齢農業者の占める割合が高い状況となっています。

図表2-7-49 農作業中の年齢階層別死亡者数と就業者10万人当たりの死亡者数

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農作業死亡事故を要因別に見ると、農業機械作業に係る事故が186人(68.9%)と最も高い割合を占めています(図表2-7-50)。そのうち、乗用型トラクターに係るものが81人(30.0%)と最多で、その中でも機械の転落・転倒事故が53人(65.4%)と最大の死亡事故要因となっています。

図表2-7-50 農作業の死亡事故発生状況

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(農作業安全対策の取組を強化)

農林水産省が令和3(2021)年2月から開催した「農作業安全検討会(*1)」は、農作業安全の実現に向けた取組の強化に向けて、幅広い観点から検討を進め、同年5月に農作業環境の安全対策の強化と農業者の安全意識の向上の二つの視点から中間取りまとめを公表しました。

現在、中間取りまとめに沿った検討や対応を進めており、具体的には、農作業環境の安全対策の強化について、特に死亡事故の発生割合が高い乗用型トラクターの事故防止に向けて、運転手にシートベルトの着用を促す警報装置や座席を離れると稼働部が停止する安全装置の装備、農業機械の安全性に係る検査制度の見直し等に向けた検討を進めています。また、農業者の安全意識の向上について、農作業安全に関する研修を受けられる体制を整備することとし、令和3(2021)年度に、全国で約4千名の農作業安全を推進する指導者の育成に取り組みました。

農作業中の熱中症による死亡事故者数は近年増加傾向にあるため、農林水産省は、令和3(2021)年5月から、環境省と気象庁が連携して運用する「熱中症警戒アラート」が発出された際に、MAFFアプリにも熱中症に注意するよう通知される機能の運用を開始しました。このほか、スマート農業実証プロジェクト(*2)においても、農業者の熱中症等の異変を検知する安全見守りシステムの実証に取り組んでいます。

これらの取組を通じ、農林水産省は、農作業事故の死亡事故を令和4(2022)年中に平成29(2017)年の水準(304人)から約4割減(185人)、最大要因である機械作業に係る死亡事故を令和4(2022)年中に平成29(2017)年の水準(211人)から半減(105人)することを目標に掲げています。

熱中症警戒アラートが発出された際のスマートフォンのホーム画面

熱中症警戒アラートが発出された際
のスマートフォンのホーム画面

熱中症警戒アラートが発出された際のMAFFアプリのホーム画面

熱中症警戒アラートが発出された際
のMAFFアプリのホーム画面

*1 農作業安全検討会は、労働安全の専門家のほか、農業者・農業団体、農業機械関係団体等の関係者で構成

*2 トピックス4第2章第8節を参照

(6)良質かつ低廉な農業資材の供給や農産物の生産・流通・加工の合理化

(農業生産資材は原材料の大部分を輸入に依存)

農業資材については、原材料やその原料の大部分を輸入に頼っていることから、偏在性がある鉱石や穀物等の国際相場や為替相場の変動等の国際情勢の影響を受けるという特徴があります。

このうち、肥料原料は資源が世界的に偏在していることから、我が国は、化学肥料原料の大部分を限られた相手国からの輸入に依存しています。貿易統計及び肥料関係団体からの報告によると、りん酸アンモニウムや塩化加里はほぼ全量を、尿素は96%を輸入に依存していることから、輸入先国の多元化とともに、輸入原料から国内資源への代替を進める必要があります(図表2-7-51)。

図表2-7-51 我が国の肥料原料の輸入相手国(図表1-6-3再掲)

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(農業生産資材価格指数は令和3(2021)年に上昇傾向)

近年の農業生産資材価格指数は、全体的には上昇基調で推移しています。特に飼料や燃油等の光熱動力等の価格指数は、令和3(2021)年4月以降、原料価格の上昇等を要因として上昇しており、令和4(2022)年2月には、基準年である平成27(2015)年の水準から飼料は20ポイント、光熱動力は24ポイント、肥料は9ポイント上昇しています(図表2-7-52)。さらに、令和4(2022)年2月以降も、ロシアによるウクライナ侵略を背景に、原油等の国際相場は高い水準で推移しつつ、不安定な動きを見せていることから、今後の動向を注視し、必要な資材の確保に万全を期する必要があります。

図表2-7-52 農業生産資材類別価格指数

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(配合飼料価格も上昇)

図表2-7-53 配合飼料価格

家畜の餌となる配合飼料は、その原料使用量のうち5割がとうもろこし、1割が大豆油かすとなっており、我が国はその大部分を輸入に頼っていることから、穀物等の国際相場の変動に価格が左右されます。令和2(2020)年9月以降、米国におけるとうもろこしの中国向け輸出成約が増加したことや、南米産とうもろこしの作況への懸念等からとうもろこしの国際価格は上昇しており、配合飼料の工場渡し価格は、令和4(2022)年1月には8万3,381円/tと、前年同月の7万902円/tより17.6%上昇しています(図表2-7-53)。引き続き、とうもろこしのバイオエタノール向け需要の拡大やロシアによるウクライナ侵略等を背景に、国際相場は高い水準で推移しつつ、不安定な動きを見せていることから、今後の動向を注視する必要があります。

(農業者はより安価な資材を求める傾向)

令和3(2021)年9月に農林水産省が公表した農業資材の販売価格等の調査では、資材販売店等における農薬や肥料の販売価格は、同一の銘柄であっても資材販売店等によって差があることが示されています。例えば、一般高度化成肥料(14-14-14)では、1,169円/20kgから3,000円/20kgまで、約2~3倍の価格差が生じています(図表2-7-54)。

また、令和2(2020)年度における資材販売店の販売価格帯別の割合は、前年度から大きな変化はありませんが、令和2(2020)年度における農業者の購入価格は、前年度と比較して低価格帯の割合が増加しており、農業者がより安価な農業資材を求める傾向が高まったと考えられます。

農業経営費に占める農業生産資材費の割合は、例えば水田作経営、畑作経営で6割、肥育牛経営で8割と一定の割合を占めていることから、農業所得の向上に向けて、農業者が安価に農業資材を購入できる環境づくりを進めていくことも極めて重要です。

図表2-7-54 肥料・農薬の販売価格の例、資材販売店の販売価格と農業者の購入価格の比較

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(農業機械費低減に向け農業支援サービス事業の育成・普及を支援)

農林水産省は、農業機械費の低減と高い生産性の実現に向け、農業機械のシェアリングや作業受託等を行う農業支援サービス事業者の新規参入や既存事業者によるサービス事業の育成・普及を支援しています。また、農業者等が各種支援サービスを比較・選択できる環境整備の一環として、令和3(2021)年3月に作成・公表した「農業支援サービス提供事業者が提供する情報の表示の共通化に関するガイドライン」に沿って情報表示を行う事業者を募集し、これらの事業者の情報をリスト化した上で、同年12月に農林水産省Webサイトにおいて公開しました(図表2-7-55)。

図表2-7-55 農業支援サービス提供事業者が情報表示を行う項目の例

(施設園芸・茶のセーフティネット対策により、燃油価格の高騰に対して支援)

重油等の燃油は、その価格が為替相場や国際的な市況等の影響で大きく変動することから、今後の価格の見通しを立てることが困難な生産資材です。重油の価格は令和3(2021)年3月以降、前年を上回って推移しており、施設園芸や茶は特に経営費に占める燃料費の割合が高いことから、農林水産省は、燃油価格高騰の影響を受けにくい経営への転換に向けての取組を支援しています(図表2-7-56)。

具体的には、計画的に省エネルギー化に取り組む産地に対して、燃油価格の上昇に応じて補填金を交付する施設園芸等燃油価格高騰対策を実施しています。施設園芸セーフティネット構築事業では、令和3(2021)事業年度に燃油価格の高騰を踏まえ、冬の加温期(かおんき)の到来に備えるため、通常の加入申請の公募のほか、追加で公募を実施するなどにより、農業者を支援しました。

また、農業者の省エネルギー化に向けた設備投資の取組を後押しするため、産地生産基盤パワーアップ事業に施設園芸エネルギー転換枠を設け、省エネ機器の導入やハウスの保温性の向上の取組等を支援しました。

さらに、令和4(2022)年3月4日、原油価格高騰等に関する関係閣僚会合において、「原油価格高騰に対する緊急対策」が決定され、農林水産省では、施設園芸等燃油価格高騰対策について、農業者が行う積立ての上限を引き上げるほか、省エネ機器の導入支援について支援枠の拡充等を行いました。

図表2-7-56 重油の価格指数

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施設園芸等燃油価格高騰対策関係

施設園芸等燃油価格高騰対策関係
URL:https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/
nenyu/nenyu_taisaku1.html

(米の農産物検査規格を見直し)

農林水産省では、農産物規格・検査が、農産物流通や消費者ニーズの変化に即した合理的なものとなるよう、令和2(2020)年9月から開催した「農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会」で検討を進め、令和3(2021)年5月に米の農産物検査規格に関する見直しの内容を取りまとめました。

また、これを踏まえ、同年7月以降、サンプリング方法の見直しや、皆掛重量(*1)の証明の廃止、検査証明方法の見直しを行いました。

水稲うるち玄米については、機械鑑定を前提とした検査規格を新たに策定することとし、実務家による機械鑑定に係る技術検討チームにおいて技術的事項を検討・整理した上で、令和4(2022)年産米の検査からの適用に向け、令和4(2022)年2月に機械鑑定用の検査規格を設定・公表するとともに、これに併せて銘柄の証明方法や包装規格の見直し等も行いました。

*1 皆掛重量=正味重量+風袋重量+余マス。「余マス」とは、米を出荷する際に、正味重量を超えて多めに袋詰めされた米のこと

(米の生産から流通に係る情報を連携するスマート・オコメ・チェーンのコンソーシアムを設立)

「農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会」の取りまとめにおいては、米の生産から消費に至るまでの情報を関係者間で連携し、生産の高度化や流通の最適化、販売における付加価値の向上等を図る基盤(スマートフードチェーン)を米の分野で構築するとともに、それを活用したJAS規格を民間主導により制定することも盛り込まれました。これを受け、農林水産省では、米のスマートフードチェーン(「スマート・オコメ・チェーン」)を推進する「スマート・オコメ・チェーンコンソーシアム」を令和3(2021)年6月に設立しました。

同コンソーシアムでは、有識者による講演会を定期的に開催するとともに、輸出ワーキング・グループ等を設置してスマート・オコメ・チェーンで活用する情報項目の整理やJAS規格素案等の具体的な検討を進めており、令和5(2023)年産米からの利用開始を目指しています。

スマート・オコメ・チェーンコンソーシアムについて

スマート・オコメ・チェーンコンソーシアムについて
URL:https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okomechain.html



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